泣くなハマ九! 「バンザイ投法」の中日のドラフト2位、浜田智博投手(22)が強烈なプロの洗礼を浴びた。中日は今季3度目の完封負け。浜田智は8回1死からプロ初登板したが、先頭の野間の本塁打から5連打を浴び、3失点と散々な内容。悔し涙を止められなかった。期待の左腕が防御率40点台から巻き返すプロ人生を歩んでいく。

 顔色を失っていた。何が何だか分からない。ベンチに下がると、とめどなく悔し涙が流れた。

 ようやく巡ってきた舞台は暗闇の中だった。最初の打者は同じ新人の野間。だが、カウント1-1から内角134キロをライナーで右翼席に運ばれた。野間にプロ初弾を献上したばかりか、実は九産大で出場した昨秋の明治神宮大会でも3安打を浴びて黒星をつけられた相手だった。デビュー最初の打者に本塁打されたのは中日では10年ぶりだった。

 不運も絡んだ。次の新井は低めの変化球で打ち取ったかに思えたが、打球は三塁線を転がった。ショックを引きずるように高卒3年目の鈴木誠に2ランを打たれた。あれよ、あれよの5連打で計3失点。こんなに1アウトが遠いものか。

 6人目の石原は139キロの直球で空振り三振。代打堂林はこの日最速の142キロを内角に突き刺し、3球三振に切った。意地と、ポテンシャルはしっかりと見る者に刻み込んだ。

 バスに乗り込む際も目は真っ赤。はなをすすり、言葉を詰まらせた。「相手のリズムに合わせる感じになってしまった。全部ダメでした。一から見直します」。同期でドラフト9位の金子はプロ2試合目も好投。同期から受けたバトンだけに悔しさも募ったはずだ。

 10日に初昇格してから9試合目でのデビュー。雨中の登板と、条件は決して整っていなかった。谷繁兼任監督は「ずっと投げる機会がなく、久々のマウンドで初登板。緊張も、よしやってやるという気持ちもあっただろう」と気遣った。友利投手コーチは「あれがあったから今があるという風にしてほしい。今は放心状態だろうが、ゆっくりビデオを見たりして乗り越えてほしい。もう、ごまかしの利かない世界にいる」と巻き返しを期待した。

 大卒の即戦力で入団。数少ない左腕は先発、ロング救援、中継ぎと多くの期待をかけられている。愛称の「ハマ九」は自らが「九州の浜田だから」と選んだもの。これから九州男児の誇りを見せなければならない。防御率40・50を胸に深く刻みつけて、長いプロ人生をはい上がっていく。【柏原誠】

 ◆浜田智博(はまだ・ともひろ)1992年(平4)10月1日、宮崎市生まれ。宮崎工で3年春にセンバツ出場。九産大では3年春の九州工大戦で無安打無得点試合を達成。4年春に全日本大学選手権8強。最速144キロ。ウエスタン・リーグでは6試合2勝0敗、防御率0・68の好成績だった。183センチ、75キロ。左投げ左打ち。

 ▼プロ初登板の浜田智が対戦した最初の打者から右本、左2、左本、左安、右2と5連打を浴びた。初登板で第1打者に本塁打は14年9月10日杉浦(ヤクルト)以来66人目で、中日では05年4月13日石井以来9人目。初登板で1死も取らないうちに5連打は、08年6月15日鶴(阪神)以来の苦いデビュー戦となった。