甲子園にズシンと地響きが起こったような気がした。6回、この日2安打目で出塁した阪神マウロ・ゴメス内野手(30)は捕逸、暴投で三塁まで進み、無死三塁のチャンス。ここで福留は深い左飛を打ち上げた。ゴメスはタッチアップを狙ってスタートを切ったが、すぐに翻った。三塁にヘッドスライディングで突っ込み、ベースを抱きかかえるように必死で帰塁した。

 「走るのも野球のうちだから。スライディングは下手なんでね。体重が重いし(笑い)。でも打撃同様、走塁でも積極的に行こうとは思っている」。マートンの適時打で無事に生還したゴメスは汚れたユニホームを指さして話した。

 先発岩田を救う先制打はゴメスのバットから生まれた。1回2四球でつくった1死一、二塁の好機。カウント3-1からヤクルト石山が投げた真ん中外寄りのスライダーを引っ張り、左前へ先制適時打だ。

 「あそこは好球必打。しっかり待って打てた。なんとか岩田を助けたいと思っていた」。6回の中前打、さらに7回には四球を選び、4番の仕事を果たした。

 守備でも独特の働きを見せた。5回、2死から連打され4番雄平を打席に迎えた際に、ふらりとマウンドに歩み寄り、岩田に何事かを伝えた。

 「岩田のテンポは良かったんだけれど、セットでしっかり動きを止めた方がいいよ、と言ったんだ」。一塁手ならではの視点でセットポジションを指摘。ボークの危険を未然に防いだという。この男が活躍すればチームが落ち着く。トラの主砲が攻守走で躍動した。【編集委員・高原寿夫】