オリックス西勇輝投手(24)が待望の今季1勝目を挙げた。大谷が復帰した日本ハム打線に2回は1点を先制されたが、粘りに粘って7回を最少失点に抑え込んだ。左顔面けいれんで4月28日楽天戦の先発を回避するなど、アクシデントの先に昨年8月1日ロッテ戦以来の公式戦白星があった。チームは2連勝で3カードぶりに勝ち越した。

 西はピンチにも笑顔だった。1点リードの6回1死一、二塁。打席には、DH大谷。高山投手コーチもマウンドに足を運んだ場面。一拍おいて呼吸を整えると、カーブで一ゴロに打ち取った。進塁されて2死一、三塁。近藤はフォークで空振り三振に仕留めた。援護を得た7回は「点を取ってもらい、気合が入った」と3者凡退。282日ぶり白星にたどり着いた。

 「本当にうれしい。去年から勝てなかったが、いつか勝てるという気持ちでマウンドに上がった。打線(の援護)はタイミング。打ってくれる日もあれば、惜しい日もある。そこで気が乱れないようにやれと、金子(千尋)さんに言われていたので」

 昨季開幕8戦8勝もマークした右腕の顔に、安心感がにじんだ。客席では野球に導いてくれた母美香さんが見ていた。勝利が母の日のプレゼントになった。

 左顔面けいれんで4月28日楽天戦の先発を回避した。「一番焦った。肩、肘の痛さじゃなく、顔に関わっていたので」。翌日は自宅周辺を散歩するなど、頭を空っぽにしようと努めた。「1回野球を忘れろ、とコーチに言われたので」。それでも気になり、テレビのスイッチをつけて試合を見た。自然と野球を考えていた。ファンからの励ましの手紙にも勇気づけられた。

 復帰初戦の3日ソフトバンク戦は6回無失点が報われなかった。今度は打線が後押し。森脇監督は「西はよく耐えた。ホームを踏ませない、気持ちの強さがあった」とたたえた。顔の違和感は今も薬で症状を抑えている。それでもマウンドで笑顔を見せた。普通に投げられる幸せを、きっと再認識できたはずだ。【大池和幸】

<オリックス西のこれまで>

▼08年8月 三重県立菰野(こもの)高で3年夏に甲子園出場

   10月 オリックスにドラフト3位入団

▼09年(3試合0勝0敗)  

   9月 プロ1年目に1軍初登板

▼10年(18試合0勝0敗)  

   8月 先発チャンスつかんだ後、顔面神経まひを発症し全治2カ月

▼11年(25試合10勝7敗1S)

   4月 日本ハム戦でプロ初勝利

▼12年(19試合8勝3敗)  

   10月 ソフトバンク小久保の引退試合でノーヒットノーラン達成

▼13年(28試合9勝8敗)  

▼14年(24試合12勝10敗)  

   5月 開幕8戦8勝の球団新記録

   9月 5連敗でレギュラーシーズン終了

▼15年(6試合1勝2敗)  

   4月 左顔面けいれんで28日楽天戦の先発を急きょ回避

   5月 10日の日本ハム戦で7回1失点と粘りの投球。開幕6戦目で今季初勝利をマーク