広島黒田博樹投手(40)が8年ぶりの交流戦登板で力投し、右足首炎症からの復帰後初勝利となる4勝目を挙げた。「日本生命セ・パ交流戦」のオリックス戦に先発。6回1/3を投げ、6安打2失点。オリックス戦も初勝利で、国内11球団から白星をマーク。メジャー時代を含めると、日米合計40球団から勝利となった。

 グータッチとグラブタッチの儀式を終えると、黒田はゆっくりマウンドを降りた。大歓声を楽しむように歩いてベンチへ。6回1/3を投げ6安打2失点。左打者の外への変化球がさえ、スピードボールとスライダー、スプリットのコンビネーションで凡打の山を築いた。4回に2点を失ったが、我慢強く腕を振った。9年ぶり2度目のオリックス戦で勝利し、パ・リーグ全球団勝利もマークした。

 「一番は自分が投げた試合でチームが勝つこと。でも今日は苦しかったですね。死球を2個当てて、自分の首を絞めてしまった」

 試合前に行われるバッテリーミーティング。黒田は必ずノートとペンを持参し、スコアラーのデータをたたき込む。開幕当初、投手陣でノートを持参するのは黒田だけだった。この日はチームが13年から7連敗中だったオリックス戦。「データは入っていたけど、考えながらでした。いい守備もあったし、石原がうまく導いてくれた」。2回に2死球を与えてからは、外角の出し入れで攻めた。準備と「オン・ザ・マウンド」の精神が凝縮されていた。

 準備を経て立つグラウンドでは、一切の妥協はない。4月11日阪神戦(甲子園)。2点リードの6回2死満塁で黒田に打席が回ってきた。点差もある状況だ。ベンチは「三振」を提案したが、黒田は断った。「若い選手に示しがつかない」。そう言って適時打を放った。勝負の世界で全力を尽くさないのは大嫌い。この日も「後ろの投手を休ませたい」と、左打者の打順までの続投を“志願”した。

 右足首の故障もあり、4月25日阪神戦(マツダスタジアム)以来の白星だ。これまで勝ち星がなかったオリックスに勝ち、チームの連敗も止めた。「1回先発を飛ばして迷惑もかけた。連敗が止められて、カードの頭が取れて良かった」。チームにも、黒田にも大きな勝利だった。急浮上の契機にはもってこいだ。【池本泰尚】

 ▼黒田が交流戦通算10勝目を挙げた。オリックス戦は初勝利となり、これで現12球団のうち広島を除いた11球団から白星を記録。黒田はメジャー時代にタイガースを除いた29球団から白星を挙げており、日米合わせて40球団から勝利を記録した。日本人投手で黒田に次いで多いのは野茂(ロイヤルズ)と松坂(ソフトバンク)の34球団。野茂はメジャー29球団と日本5球団で、松坂はメジャー23球団と日本11球団。