西武が笑いあり、涙ありの青春野球で逆転勝利を収めた。最大4点差を追う展開も、7回にミス続出の木村文紀外野手(26)が執念のヘッドスライディングで出塁。中村剛也内野手(31)が2戦連発となる15号逆転3ランで後輩の窮地を救った。試合中には森友哉捕手(19)の登場曲を炭谷らが勝手に変更するなどノリノリムード。5カードぶりの勝ち越しで、3、4月に続き、5月も白星を先行させた獅子ベンチの一体感に潜入した。

 失意の木村をみんながもり立てた。5回にバント失敗し、6回にはフライ落球から3失点。「正直、きつかった」と心が折れかけた。だが主将の栗山が「取り返してこい!」と7回の打席に送り出す。食らいついた打球は三遊間へ転がり、一塁にヘッドスライディングで突っ込み、セーフをもぎ取った。執念のバトンは渡辺の犠飛、秋山の適時打とつながり、最後は中村が4戦4発となる逆転の15号3ランで完結させた。木村は「涙が出そうになりました」と仲間に感謝した。

 涙あれば、笑いもある。試合前に炭谷、脇谷、野上が「森の登場曲、何かない?」と不振の後輩への気分転換にと打ち合わせした。「マル・マル・モリ・モリ!」が候補に挙がる中、野上が「『夢がMORIMORI』どうですか?」と提案。秋元康作詞で森口博子のヒット曲をラップ調の出ばやしから無断で変更した。

 92年の曲を19歳の森が知るよしもない。だがテレビ番組名でもあった「夢がMORIMORI」の人気企画、スーパーキックベースのチョロキックさながらのボテボテの当たりが幸運な内野安打2本を呼んだ。「曲は知らないです。でも(結果も出て)しばらく、これでいきます」とラッキーソングにあやかった。

 日ごろからベンチはアゲアゲだ。最近はヤジを飛ばすと周囲が「そうそう!」と合いの手を出すのが、はやり。合いの手がやむまで同じ選手がヤジを続けないといけない。脇谷は「ヤジのイップスになる」と苦笑いするが、言葉の分からないメヒアがスペイン語でまくし立てても「そうそう!」と声が飛び、助っ人も、倣ってスペイン語でヤジを続ける。好調の裏に空気が1つになっている。

 中村は「気合で打ちました」と珍しく魂を強調した。「エラーはつきもの。自分もやるしね。そういうこともあり気合が入った」。涙と笑いの数だけ、青春真っ盛りの西武は強くなれる。【広重竜太郎】

 ▼中村が逆転3ラン。5月の月間打点を30に伸ばした。中村の月間30打点以上は、14年8月(32打点)以来2度目。パ・リーグで月間30打点以上を2度以上記録した選手は、64年5月、71年8月、72年9月の土井正博(近鉄)、01年4、5月、02年8月のカブレラ(西武)に次いで3人目。