さにあらず、野球の神様は残忍だ。阪神藤浪晋太郎投手(21)の連続無失点イニングは32でストップした。6回まで2安打10奪三振で無失点。2回に自らの適時打で3点目をたたき出し、6回までに8得点の援護を得た。完封ペースの7回に味方のまずい守備などもあり6失点で途中降板。すぐそこにあった4勝目も消えていった。

 珍しい光景だ。8点リードの7回無死三塁。大量リードにもかかわらず、内野陣は前進守備を敷いた。粋な計らいに是が非でも応えたかったが…。藤浪は10回サヨナラ勝利にも浮かれることはできなかった。

 藤浪 1度作られた流れを止められなかった。それに尽きる。完投していれば勝っていた試合。

 8-0の7回だ。先頭4番今江の右前ライナーが分岐点となった。右翼伊藤隼がショートバウンドした打球を後逸。これが三塁打となり、失点のピンチを迎えた。中西投手コーチがマウンドに向かう。内野陣も集まる。「どうする? 完封したいか?」。コーチから問われ、「完封したいです」と返した後に「(内野は)下がってもらっていいです」と続けた。この時点で32イニング連続無失点。自身の記録よりもチームの勝利を優先しようとした。

 藤浪 でも8点あるし、せっかくだから…、ということでそうなりました。

 首脳陣の最終判断は前進守備。5番クルーズは空振り三振で1死三塁。6番根元の当たり損なったゴロを二塁上本が大きく弾いた。失策で連続無失点が途切れ、観客席からとため息が響き渡る。ここで強い責任感が裏目に出た。

 藤浪 (味方のミスを)カバーしようと思って力んでしまった。

 制球が乱れ甘くなった。1死一塁から3安打1四球で失点は4まで膨らみ、唇をかみしめ無念の降板。2番手高宮がタイムリーを浴び、3番手松田が同点3ランを被弾。電光掲示板の「8」という数字を見つめ、表情を凍りつかせた。

 6回88球を投げた時点で2安打10奪三振。中盤までは力みのないフォームから最速157キロを計測し、変化球のキレ味も上々だった。6回2/3を6失点。完封ペースだっただけに納得できるわけがない。

 藤浪 ゼロで行くに越したことはないけど、いつかは取られるものなので。それより、点の取られ方が良くなかった。

 自責点ゼロ。不運な形で失点したのは事実だ。チーム4人目となる3試合連続2桁奪三振も記録し、32回連続無失点は球団歴代10位タイ。それでも自戒した。期待の大きさを自覚し、必ず猛省の1日は脳裏に焼きつける。【佐井陽介】

 ▼藤浪の連続イニング無失点は32でストップした。藤浪は5月14日ヤクルト戦3回から無失点を継続していた。球団史上10位タイにランクイン。

 ▼阪神藤浪が5月20日巨人戦(10個)同27日楽天戦(13個)に次いで、11奪三振。3試合連続2ケタ奪三振は、昨年5~6月にセ・リーグ記録の5試合連続をマークした能見(阪神)以来。藤浪は3年目。セの高卒3年目まででは68年江夏(阪神=2度)90年川崎(ヤクルト)がともに2年目で3試合連続を記録したのに次ぎ3人目。