ソフトバンクが5度目の挑戦で今季初の4連勝。巨人相手に1点差で逃げ切り、パ・リーグと交流戦のダブル首位に躍り出た。立役者は今季11度目のスタメンに起用された川島慶三内野手(31)。4回に左前へ同点打。守っては2度の中継プレーで本塁へ好返球。巨人の反撃を阻止した。2戦目で交流戦4カード連続の勝ち越しを決めた。

 川島はスタンドを探すように叫んだ。「まだいるかな? 塁、連十(れんと)やったよ~!」。観戦に来ていた息子2人の名前を叫んだ。昨年シーズン途中にヤクルトから移籍。単身赴任でいつも寂しい思いをさせている家族の前で格好いい姿を披露した。

 2点リードの8回。守りで見せた。2死一、二塁。巨人アンダーソンの打球は右中間を破った。中堅柳田の返球をカットした二塁の川島が本塁へ好返球。一塁走者大田を憤死させた。「止まって投げるより体重がかかって、いい球がいくんで」。川島は中堅柳田からのワンバウンド返球に合わせるように本塁方向へ体を動かしながら捕球。勢いをつけて投げることで強い返球を本塁へ投げた。2回にも同じように柳田との中継プレーで本塁補殺。1点差で逃げ切ったからこそ、価値のある守りだった。

 バットでも見せた。1点を追う4回、3つの四球で1死満塁。「初球から振ろうと。強い気持ちだった」と、待たずに杉内の初球をたたき、左前へ同点適時打。高谷の勝ち越し2点二塁打につなげた。

 久々に自宅から出勤したこの日、朝から息子たちとキャッチボールをした。試合前には、ベンチ前で紗那夫人と塁君(8)連十君(5)に練習する姿を見せた。ラップ音楽が好きな父はラッパー歌手のように大きめの帽子を、つばを真っすぐにしてかぶっている。息子たちの帽子のつばも、やっぱり真っすぐだった。

 昨年は左肩脱臼でわずか29試合。今季もキャンプでインフルエンザで出遅れた。だが、4月14日に昇格すると代走などで信頼を獲得していった。この日で30試合の出場、スタメンも11試合を数える。今や工藤野球に欠かせない選手だ。「今から食事に行きます」。久々の家族水入らずの食事へ。単身で頑張る父は笑顔で出かけていった。【石橋隆雄】