すごかっ! ソフトバンクの新外国人リック・バンデンハーク投手(30)が初登板初勝利を飾った。前日21安打の赤ヘル打線を6回6安打2失点。最速154キロ直球とスライダーを軸に7三振を奪った。工藤監督らの評価も高く、次回の結果次第でスタンリッジに代わり、先発ローテ入りする可能性も浮上した。チームは連敗を止め、首位(最高勝率)の可能性を残して交流戦を終えた。

 韓国で最優秀防御率と最多奪三振の2冠に輝いた実力は本物だった。198センチのバンデンハークがマウンドで仁王立ち。この2日間、6発を含む30安打と猛威を振るっていた赤ヘル打線を力でねじ伏せた。

 お立ち台で笑顔が映えた。日本語で「ハジメマシテ~」とファンにあいさつ。「立ち上がりは少し緊張したが、4回以降は自分のリズムで投げられた。やっとチームの力になれてうれしい」と実感を込めた。

 初回、失策が絡んで先制点を許したが動じない。直球は最速154キロ。高い制球力で内角を突き、スライダーで惑わせた。広島は教育リーグも含め、2軍戦ですでに4度登板しており、相手スコアラーに特徴を丸裸にされていたはずだが、その上を行く力があった。

 2月のキャンプ中に左足内転筋を痛め2軍暮らしが3カ月続いた。1軍の外国人投手枠は最大3人。スタンリッジ、バリオス、サファテが好投を続け、ウエスタン・リーグでトップの防御率1・17(5勝1敗)を保ちながら出番がなかった。気持ちが切れそうになったとき自宅ベランダからヤフオクドームを見つめた。「俺はホークスの力になるために来たんだ」-。今回、交流戦後の日程が空くため、スタンリッジ抹消の枠を使って昇格。思いをぶつけた。

 観客席ではアナ夫人、3日前にオランダから来日した母リタさん、義父ジェイジェイさんが観戦。ウイニングボールとして2つ受け取ると「妻と母にプレゼントするよ」とニッコリ。愛妻と口づけを交わし、勝利を喜んだ。今日15日からの休日は、家族で長崎のハウステンボスを訪れる予定。「僕はオランダ人だから、オランダらしいところに行きたいんだ」と笑う。

 16歳でマーリンズと契約した時には捕手。だが打力が向上せず、その後身長が伸び、投手に転向したことで道が開けた。挫折してもあきらめないタフさが成功を生む。工藤監督は「よく知らない打者にあれだけ投げられるんだから、知っていけば良くなっていくと思う。非常によかった」と高評価。先発ローテ入りの大きく道も開けた。

 交流戦を白星で終え、1試合残す日本ハム次第では首位(最高勝率)の望みもつないだ。チーム力をさらに高め、リーグ戦再開を迎える。【福岡吉央】

 ◆リック・バンデンハーク 1985年5月22日、オランダ生まれ。父がコーチを務めていた地元チームで野球を始める。16歳の時にマーリンズと契約。オリオールズ、パイレーツなどでメジャー通算50試合8勝11敗、防御率6.08。13年から韓国・サムスンに所属。14年には13勝4敗、防御率3.18、180奪三振で最優秀防御率と最多奪三振の2冠に輝く。09年WBCオランダ代表。語学はオランダ語以外に英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、韓国語が可能。愛称はバンディ。198センチ、105キロ。右投げ右打ち。