連勝は止まっても、Vロードは明るく照らされたままのはずや。死球による背中痛の影響で2試合連続7番出場となった阪神鳥谷敬内野手(34)が、今季初の1試合4安打を記録した。2回の二塁打がヒットショーの幕開け。4回に右中間へ先制2点二塁打。6回には左前安打で、8回に一塁強襲安打。4打数4安打はプロ初だ。チームの1分けを挟んだ連勝は6で止まったが、Vへのキーマンのバットが快音を連ねたのは、虎党にとって何よりの朗報だ。

 事情を知らなければ、誰も手負いの男と見抜けない。試合後、鳥谷は何事もなかったかのように三塁側ファウルゾーンを黙々と歩いた。「トリタニ~ッ!」。体調をおもんばかる虎党の叫びにも表情を変えない。オレは大丈夫-。クールなたたずまいに、キャプテンの覚悟がにじみ出ていた。

 鳥谷 試合に出ているんで。(体の状態は)まあ、普通です。

 2戦連続の7番先発。2回だ。2死一塁から小川のカットボールに反応し、左翼線に運んだ。第1打席の二塁打で不安説を吹き飛ばすと、以降は打ち出の小づちと化した。4回1死一、二塁では再び内角低めのカットボールを振り抜き、フェンス直撃の2点二塁打。チーム8戦連続となる先制点奪取だった。

 鳥谷 ヒットが2人続いて自分に回ってきたので、そのいい流れを止めないようにと思っていました。

 6回は左前打。1点ビハインドとなった8回2死二塁では痛烈なゴロで一塁強襲安打を放ち、相手失策を誘って試合を振り出しに戻した。今季初の4安打がこのタイミングで飛び出すとは…。鉄人の真骨頂だ。クールに、周囲の心配をバットで一掃した。

 6月21日ヤクルト戦で背中に死球を受け、珍しく顔をしかめた。4月に痛めた右脇腹に近い箇所。練習など公の場では普段通りに振る舞う中、同28日DeNA戦で5年ぶりに7番まで打順を落として先発した。

 鳥谷 打順と言っても別に…。場面場面で打席に立つだけなので。

 患部の状態は決して芳しくないとみられるが、7番スタメンの2試合で計6打数5安打。100%の強振ができなくても、熟練の巧みな技でカバーできる。もう配慮はいらないとばかりに、結果を出した。

 「コンパクトに振っている分、芯でとらえる確率が高くなっている。いい方に出ている」。和田監督はホッと胸をなで下ろした。チームは連勝が6でストップ。流れを変えるためにも、近日中に上位打線へ復帰する可能性は非常に高い。

 鳥谷 ずっと勝てるわけじゃない。明日は引きずらずに、しっかり勝てるように頑張るだけ。

 頼もしい言葉だ。これで503試合連続フルイニング出場、1537試合連続出場。やはりキャプテンの存在は極めて大きい。驚きの4安打。痛恨の1敗には、前向きになれる数字が刻まれていた。【佐井陽介】

 ▼鳥谷の1試合4安打は自身最多タイで、14年8月27日巨人戦(東京ドーム)以来プロ17度目。過去の16度はいずれも、打席、打数とも5以上。「4打席4安打」「4打数4安打」ともプロ初となった。前戦6月28日DeNA戦(甲子園)2打数1安打と合わせ、今季先発7番での2試合で6打数5安打、打率8割3分3厘。またこの試合での2打点はリーグ戦再開後の初打点で、6月16日の日本ハム戦(甲子園)1打点以来7試合ぶりとなった。