いきなりの4番弾だ! ヤクルト山田哲人内野手(22)が、故障で登録抹消となった畠山に代わってプロ入り後初の4番に座り、2回の19号同点ソロでトップの畠山に並んだ。盗塁も15個でトップを走っており、本塁打と盗塁の2冠達成となればプロ野球史上初の快挙。「回の先頭だったので、いつもと同じ気持ちで入ったのがよかった」と1番打者のつもりで、逆転勝利も呼び込んだ。

 見逃せばボールだった。フルカウントから井納の7球目、内角高めスライダーを振り切り、左中間席中段まで軽々と運んだ。「4番といえば体が大きくて遠くへ飛ばすイメージ。僕は体形が4番じゃない。恥ずかしい。僕はパワーヒッターじゃなくてアベレージヒッター。だから1番でも3番でもスタイルは変えない」と、自己流を貫く気持ちで初4番を迎えた。

 しかし、打球はよく飛ぶ。ここ12試合で8発の量産態勢に突入。真中満監督(44)は「パワーもあるよ。相手投手には一番嫌なバッター。ただ足、守備含めてバランスのいい選手になってほしい。盗塁はただ走らせれば50個はする」と言う。もちろん状況判断は必要だが、いつでも走っていいという指示が出ており、能力的には打率3割、30本塁打、30盗塁の「トリプル3」の可能性も十分だ。

 開幕してしばらく苦しんだ。「僕だけでなく、みんなが言っていますが外角が広い」とストライクゾーンの戸惑いを隠せなかった。真中監督は「どこまで手を出したらいいか迷っていたようだ」と苦闘する22歳を見守った。5月6日には2割4分2厘まで落ちた打率が、同9日からの秋田遠征で杉村打撃コーチから(1)右の壁を作る(2)ゴロを意識(3)始動を早め間を取る、の3点をアドバイスされ、2週間後には3割を超えた。それからは好調を維持。壁を乗り越えるのも早かった。【矢後洋一】

 ▼山田が畠山(ヤクルト)に並ぶ19号を放ち、現時点で19本塁打と15盗塁がリーグトップ。過去に本塁打王と盗塁王を獲得したのは、44年に本塁打王、50、52、53年に盗塁王の金山次郎と87年本塁打王、90年盗塁王の秋山幸二だけ。同一シーズンに本塁打王と盗塁王の両方を獲得した選手はまだおらず、山田が史上初の快挙に挑戦する。

 ◆大リーグでは 本塁打王と盗塁王を同一年に獲得したのは、1903年ジミー・シェカード(スパーバス=9本、67盗塁)1909年タイ・カッブ(タイガース=9本、76盗塁)1932年チャック・クライン(フィリーズ=38本、20盗塁)の3人。