ソフトバンクが大逆転勝利で4年ぶりの首位ターンを決めた。ロッテとの一戦は苦戦を強いられたが、7回2死走者なしから3点ビハインドをはね返す一気の逆転劇。直前には工藤公康監督(52)が抗議に出るシーンがあった。福岡移転後、首位ターンでシーズン1位を逃したケースはゼロ。貯金は今季最多21だ。

 敗戦ムードが漂う中で、指揮官のアクションが流れを変えた。3点を追う7回表2死。6番松田の初球は抜けたカーブでユニホームをかすめた。しかし審判は死球ではなく、ボールと判定した。

 松田 避けられる時間があるということだった。

 これに工藤監督がベンチから飛び出した。「当たっていたが、デッドボールじゃなかったんで。納得できない部分が多かった」。身ぶり手ぶりで主審に訴えかけた。3分40秒の抗議の末、ベンチに戻った。

 かすかに芽生えた変化。この時点で誰も気づかなかっただろう。6回まで打線は2安打に抑えられていた。涌井は今季3勝を献上している天敵だ。松田が必死でボールを選んだ。結果、四球で出塁。「塁に出たいと思っていたから。5点になったと思うと、出てよかった」。続く中村晃が右前打でつなぐと、ベンチは動いた。吉村を筆頭に3者連続の代打攻勢だ。

 工藤監督 みんな、ここがチャンスだと、いい集中力を出してくれる。

 2四死球に暴投で1点差に迫ると、3人目の代打川島が決めた。2番手藤岡の外角フォークに食らいつく。打球は前進守備の外野手を越え、右中間を破る逆転の2点三塁打になった。

 川島 2アウトからでも、監督が(抗議に)出てくれる。あきらめない姿勢がうれしかった。より熱くなれた。

 7回2死、走者なしから打者一巡の逆転劇が生まれた。指揮官を先陣にした「熱男」たちの執念だった。工藤監督は「抗議で(涌井の)リズムが狂ったわけじゃない。みんなが、しっかりとつなげてくれた」とナインの働きをたたえた。

 2位日本ハムと3・5ゲーム差を維持し、前半戦首位が確定した。この振りに、「どうも。ありがとうございます」と指揮官は言ったが、表情を崩すことはなかった。「受け止めて、1つずつなんで、しっかりとモノにできるようにやっていきたい」。ホークスの福岡移転後、首位ターンは過去に4度あるが、いずれもレギュラーシーズンを1位で終えている。1位率100%の逃げ切りデータ。5度目の今年も継続させる強さがある。【田口真一郎】

 ▼ソフトバンクがロッテに勝ち、首位ターンを決めた。89年に福岡移転後5度目。99年、03年、05年、11年に続く4年ぶりで、05年以外はいずれもリーグ優勝。ただ、05年も89勝を挙げシーズンは1位で突破。当時のプレーオフでロッテに敗れて優勝を逃したが、福岡移転後では過去リーグ戦終了時の1位確率は100%となっている。

 ▼前半戦首位を決めたソフトバンク工藤監督は、就任1年目。パ・リーグで前半戦首位で折り返した新人監督は、60年西本監督(大毎)02年伊原監督(西武)04年伊東監督(西武)08年渡辺監督(西武)に次いで5人目(2期制時は除く)。過去4人はすべて優勝したが、工藤監督はどうか。