記録的猛攻で首位を再び射程にとらえた。ヤクルトがともに今季両リーグ最多となる17得点、22安打で快勝。3点リードの9回に、10打数連続安打を含む1イニング11安打の球団タイ記録をマークし、11点を奪ってダメを押した。リーグ最速20号に到達した山田哲人内野手(23)ら5人が猛打賞を演じ、2戦連続17安打以上の破壊力で、前半戦首位のDeNAをBクラスに突き落とした。ベンチと選手が一体となり、勝率で首位巨人と1毛差の2位タイにつけた。

 横浜の夜空に、ツバメたちが奏でるヒットパレードが流れた。ヤクルトは4点リードの9回1死一、三塁。連打で巡ってきた打席で山田が「(勢い)止まらないな~」と初球、外角高めに抜けたフォークをフルスイング。リーグ最速20号を右中間スタンドに運んだ。「とにかく引っ張らないようにした結果ですけど、狙い通り。20号を打てるとは、自分でもびっくりです」と2年連続20号大台で、打線にますます火を付けた。

 山田の言葉通りに、攻撃の手を緩めなかった。打者一巡どころか、リーグ歴代2位タイの10打数連続安打に、リーグ記録にあと1と迫る11安打を最終回に浴びせた。11得点のビッグイニングに真中監督は「控え選手も集中力を持ってつないでくれた」と称賛。ベンチにも空気は伝わっていた。プロ初の猛打賞をマークした比屋根は「(先頭の)中村が打って、いい流れ的なものがあった」と笑った。DeNAファンの悲鳴にも近い叫び声が、球場内に響いた。

 前日も17安打を放った打線の勢いは、天敵をものみこんだ。昨年7月から5連敗中のDeNA三浦を攻略。試合前、真中監督の「特に左打者はセンター方向への意識が大事。左に対してカットボール、スライダーで引っ張らせるような組み立てが多いから」の指示がはまった。

 ラストイニングの猛攻は、指揮官の執念が呼び込んだものだった。4点リードの5回、先発小川が代打乙坂に1発を献上。次打者の梶谷に四球を与えた直後、真中監督がベンチを飛び出した。まだ安全圏の得点差にも思えたが、「いつも高津さんなので気分転換に。『冷静に落ち着いて』と言った」。今季86試合目にして初めて、自らマウンドに足を運んだ。

 昨季の最下位チームを引き受けた真中監督はシーズン開幕前、目標に「優勝」と掲げた。日替わりで順位が変動する大混セ。ヤクルトも折り返しを過ぎても優勝戦線に残り、首位巨人に肉薄した。脅威の打線が、首位奪回に再び向かう。【栗田尚樹】

 ▼ヤクルトがDeNA戦の9回に10打数連続を含む11安打で11得点。1イニングの連続打数安打記録は09年6月14日ヤクルトの11打数で、10打数以上は10年6月7日にロッテとオリックスが記録して以来8度目。ヤクルトはプロ野球記録の11打数連続以外にも98年4月22日に10打数連続をマークしており、10打数以上の連続安打を3度記録したのはヤクルトだけ。また、1イニングの最多安打記録は92年7月15日西武の13本だが、ヤクルトの11本は09年6月14日オリックス戦以来4度目の球団タイ記録。1イニング11安打以上を4度やっているのもヤクルトしかない。

 ▼山田がリーグ単独トップの20号。ヤクルト選手のセ・リーグ20号一番乗りは12年バレンティン以来だが、日本人選手では92年池山以来、23年ぶり。

 ▼1イニングの最多得点は09年6月11日ロッテが6回にマークした15点。セ・リーグ記録は13点だが、「9回」の得点としては76年7月25日近鉄、84年8月9日阪神、86年6月3日広島、03年5月31日阪神に次いで5度目の最多タイ。