地方の「鬼」が本領を発揮した。ソフトバンクのジェイソン・スタンリッジ投手(36)が7回2失点の好投でチームトップの9勝目を挙げた。盛岡のマウンドにも対応し、地方球場で先発した試合は8勝1敗。環境の変化に強い右腕が、自身初の2年連続の2桁勝利に王手をかけた。

 地方独特の熱気が心地よかった。スタンリッジの「神話」は健在だ。序盤に通り雨に見舞われたが、投球に影響はなかった。安定感のある投球で、7回まで2失点に抑えた。チームトップの9勝目。これで地方球場は8勝1敗だ。「チームが勝ってよかった。味方があれだけ点を取ってくれた。自分1人で9回まで投げないといけない試合。7回で代わったのは、自分に納得がいかない」。高いレベルを求め、自らをいさめた。それでも、快勝の立役者に違いない。

 最初から地方の「鬼」だったわけではない。来日イヤーとなった07年。初の地方マウンドは盛岡だった。中継ぎ登板でアウト1つ取れずに2失点。その後、解雇を経験し、阪神で日本復帰。実績を積み重ねて、2度目の福岡生活に入った。「地方球場が大好きなわけではないが、いい結果が出ている。いろんなマウンドに対して、いかにきっちりと調整できるか」。36歳の右腕は経験で環境の変化に打ち勝ってきた。これがいかに偉大なことか。工藤監督は言う。「地方球場で一番難しいのは、マウンドだ。柔らかくて、掘れることが多い。特に外国人選手なんて、足首まで埋まってしまう」。メジャーの硬いマウンドに慣れると、対応しづらい。だからこそ価値がある。

 一時は調子を崩したが、これで3連勝。自身初の2年連続の2桁勝利に王手をかけた。「やっと9勝したんだ。そういうことは言わないでくれよ。次、勝った時に話をしよう」と苦笑した。楽天戦は阪神時代から数え、6連勝。地方&楽天のキーワードからは勝利しか出てこない。【田口真一郎】