夏男の季節がやってきた。ソフトバンク内川聖一外野手(32)が初回、相性の悪かった西武野上から8号決勝2ランを放った。30試合ぶりに出た主将の久々の1発で、連敗阻止に燃える西武を下し、8月も白星発進。これでチームは4連勝で、今季最多の貯金29。8月も首位を独走し、連覇に向けて突き進む。

 心地いい、久々の感触だった。内川が初回2死二塁のチャンスで、西武野上の外角直球143キロを捉えた。左中間スタンドに運ぶ先制の2ラン。6月11日阪神戦以来、30試合ぶりとなる8号で、シーズン自己最多9勝目を狙う先発武田を早々と援護した。

 「ホントにしばらくホームランを打っていなかったので、入るか自信がなかったが、入ってよかった。ああこんな感触だったなあ、と思いましたね。いい一打になりました」

 野上とは今季5度目の対戦だった。内川はこれまで11打数1安打に抑えられていたが、この日は違った。先頭で迎えた4回の2打席目でも三塁に内野安打。完全に苦手意識を払拭(ふっしょく)した。

 今年は開幕から全試合で4番を任されているが、あくまで自分の打撃スタイルを貫く。3番柳田が21本塁打、5番李大浩が20本、6番松田が22本と、前後を打つ打者が軒並み20号に到達する中、内川はなかなか本塁打が出なかったが、8年連続打率3割を目指す男は、自分の持ち味を見失うことはなかった。

 「3、5、6番に比べて数字的に劣っている部分が非常にある中で、何とかしたい気持ちは毎試合持っている。何とか結果に表れてよかった」

 工藤監督が就任した今季は主将としての大役も担う。「僕はいつも打たないといけない立場。常に打たないといけないと思っている。もっと打てると思っているから、いらいらしてジレンマを感じる」。打てない日は試合後、自宅に帰ってもなかなか眠れない日もある。それでも「キャプテンで4番という立場でやらせてもらっている幸せはすごく感じる」と、前向きだ。

 8月4日生まれの夏男にとって、この日の1発は、3日早い33歳の誕生日の前祝い弾にもなった。「8月になって、月も替わったので頑張ります」。連覇に向けて、いよいよ終盤戦。決して満足しない理想高き主将が、暑い夏場のチームを引っ張っていく。【福岡吉央】