やったぜ、若さま! 負ければ23年ぶり9連敗という中日の不名誉な記録を阻止したのは、20歳の若松駿太投手だった。笑顔のヒーローは「最高です! 初完封もうれしいけど、チームの連敗を止められたことがうれしいです」。自己最多の139球。1軍では7回が最長だったが、巨人を5安打に抑えてプロ初完投を完封で飾った。

 得意の魔球が巨人打線を完全に惑わせた。約4割の56球がチェンジアップ。「1発のある打者がたくさんいる。低めを意識して投げた。(首脳陣から)1点を取られるまでは投げさせると言われていた。単打3本なら点は取られないというつもりで投げた」。1回から直球が浮いていると判断すると、ちゅうちょすることなくチェンジアップを多投した。これが結果的に、はまった。9回2死では、阿部にこの日56球目となるチェンジアップを投げて右飛。三塁も踏ませないほぼ完璧な投球は「(オリックス)金子さんのイメージ。(直球と)腕の振りが一緒で止まって見える」という決め球のおかげだった。

 ベンチでは完封宣言していた。友利投手コーチは「男を上げる絶好の機会でやりやがった。試合中、爽やかに(完封)やりますとか言いやがって」とやりとりを明かした。前回登板の7月26日ヤクルト戦では4回7失点KO。初先発となった巨人戦は昨季、シーズン終盤の9月23日に中継ぎ登板し、わずか2/3回で5失点と打ち込まれた。名誉挽回のマウンドで言葉どおりに大仕事をやってのけた。

 谷繁兼任監督も長いトンネルから抜けだし「やっとですね」とニッコリ。「チームが苦しい中で完封するというのは、すごくパワーがいること。それを彼はやった。これが自信になってくれれば」と褒めちぎった。今後も中6日のローテを守れば、今月だけであと2回、巨人と対戦する。伸び盛りの20歳が、竜の意地を体現していく。【桝井聡】

 ▼20歳5カ月の若松がプロ初完封勝ち。巨人戦の登板は14年9月23日に次いで2試合目だが、前回はリリーフで2/3回を投げ5失点。巨人戦初先発で完封勝ちは14年5月28日則本(楽天)以来となり、中日では96年8月2日門倉以来、19年ぶり。門倉は巨人戦初登板、プロ初先発で完封した。また、20歳以下の投手が巨人戦で完封勝ちは91年5月21日川崎(ヤクルト=20歳4カ月)以来、24年ぶり。中日では、87年近藤が18歳11カ月の8月9日にノーヒットノーラン、19歳0カ月の9月30日に4安打完封して以来になる。

<若松駿太(わかまつ・しゅんた)アラカルト>

 ◆生まれ 1995年(平7)2月28日、福岡県久留米市。

 ◆自然児 実家は「田んぼに囲まれていました」。最寄りのコンビニまでは約2キロあるという。

 ◆球歴 小学4年で野球を始める。福岡・祐誠(ゆうせい)高2年まで投手兼内野手。同校3年の夏は福岡大会2回戦敗退。

 ◆精密機械? 高校では土木科。2年の時には小型車両系建設機械の資格を取得。3トン以下の重機を自在に操る。

 ◆隠し玉 12年ドラフト7位指名で入団。プロ球団からの調査書は中日からしか届かなかった。

 ◆大物の証し 左頬のアザが「バレンティンさんと同じ」(若松)。

 ◆監督賞1号 13年秋季キャンプの紅白戦で先発し4回無安打無失点。就任したばかりの谷繁兼任監督が「実戦向き」と評価。

 ◆サイズ 180センチ、75キロ。右投げ右打ち。