純粋に野球を楽しんだ。ヤクルト小川泰弘投手(25)が、13年9月15日の阪神戦以来となる完投で、今季初完封勝利を挙げた。広島打線を散発4安打、131球で片付け、7勝目を手にした。前日に開幕6戦6勝をマークした山中浩史投手(29)に続き、チーム2試合連続の完封勝ち。エースの力投でチームは3連勝&2位の座を死守。ゲーム差1・5の首位阪神を射程圏内に捉えている。

 最後まで野球を楽しんだ。5点リードの9回2死一塁。午前中から降る雨は、一層激しさを増していた。それでも、マウンド上の小川は、意に介さなかった。カウント2-2。どっしりと下半身で踏んばり、腕を目いっぱい振った。最後の打者・梵を外角スライダーで三ゴロに仕留めた。今季最多の131球。「本当にチームに迷惑をかけていた。先発として1イニングでも長く投げることを考えていた」とかみしめた。

 悔しさをぶつけた。前回登板の5日の巨人戦。1試合で3個の盗塁を許した。しかも2つは三盗。「癖を見抜かれている」。調整期間中のブルペンではクイックモーションの練習に明け暮れた。一、二塁を想定して投球練習。さらに「無駄な動作が多かった」と癖を見直した。マウンド上を歩き回り、球場全体を見渡す癖も修正。すぐに打者と向き合った。低めに集めたカットボールとフォークをリズミカルに投げ込んだ。

 裏方さんの優しい一言もエースの肩を支えた。7月中旬。神宮室内練習場内のブルペン。予定していた50球を超えた。内容に納得がいかず、10球多く投げ込んだ。練習相手の江花ブルペン捕手から言われた。「プチアバウト投法でいいじゃん」。どこまでも完璧を求める性格を知った上での言葉だった。小川は「自分でも分かっているんです。何でも完璧じゃないと気が済まない」。同ブルペン捕手は「いい意味で少し適当になってもいいんじゃないかな」と温かい目で見守った。

 「自分の中に入り込みすぎず、野球を楽しもうと思ってバッターに向かっていけた」。試合後の小川は笑みをこぼした。前夜の山中に続く完封劇。「先発ピッチャーが早い回で降りることが多く、悔しかった。まだ(セ・リーグは)混戦ですけど、全力で戦っていきます」。ライアンに、久しぶりの笑顔が戻った。【栗田尚樹】

 ▼小川が13年9月15日阪神戦以来2年ぶり通算4度目の完封勝利。小川はマツダスタジアムと相性がよく、通算8試合5勝1敗、防御率1.78。13年6月22日のプロ初完封もこの球場だった。ヤクルトは前日の山中に続く完封勝ち。チームの2試合連続完封勝利は13年9月14、15日以来だが、この時は1試合が継投。1人の投手による連続完封は、12年8月25、26日中日戦(ナゴヤドーム)の館山→村中以来3年ぶり。