巨人の吉川大幾内野手(22)が、昨年まで在籍した古巣に成長の跡を見せつけた。中日18回戦に2番三塁で先発し、2本の二塁打を含む3安打2打点で勝利に貢献した。勝手知ったる昨季までの本拠地が、東京ドームより暗くて投手有利という特性を把握して直球系の球を仕留めた。前日13日のDeNA戦でエース菅野が完封目前の9回に逆転負けを喫したショックを、若武者が振り払った。

 目線をグッと下げた。立ち遅れないよう、トップを早めに作った。初回1死、初球。吉川が中日先発ネイラーの144キロを押っつけた。角度ある直球への備えと気迫が詰まった打球が、三塁線を突破した。元チームメートが守る中を駆け、二塁まで到達。4番阿部の適時打で一気に生還した。「ファンの人に意地を見せられた」。意地を見せつけたのはファンだけじゃない。去年までの将・谷繁監督にも見せつけた。

 試合前から目をギラつかせていた。ナゴヤドーム初スタメンだった。守備練習を終えると「燃える気持ちはありますよ。やってやりますよ」と高まる感情を抑えきれなかった。巨人に拾ってもらい、必死にもがいてきた。ゲーム中に捕手が足りなくなれば「僕がやります!」と立候補。坂本が試合直前のアクシデントで欠場するや、遊撃の代役を見事に果たした。ベンチから徐々に信頼を勝ち取り、ようやくたどり着いた舞台だった。

 高ぶるだけじゃ仕事はできない。観察眼が支えた3安打だ。「マウンドが他の球場より高いから、角度を感じる。あと球場が暗いんですよ。だから球速が速く見えます」とナゴヤドームの特性を見透かしていた。確かに、バッテリー間の明るさ2500ルクスは、東京ドームに比べて300ルクス暗い。暗くなれば体感速度は速く感じる。すべて直球系を仕留めた猛打賞には心技体の裏付けがあった。

 チームの視界も一気に開いた。前夜のDeNA戦では、菅野が9回1死から2点差をひっくり返された。嫌な流れを移籍1年目の若武者が振りはらった。「この世界に入れたのも中日のおかげ。感謝している。今は巨人の一員なので目の前のプレーをやるだけ」。戦力外の辛酸をなめた名古屋の地を踏み台に、レギュラー定着を狙う。【細江純平】

 ◆吉川大幾(よしかわ・だいき)1992年(平4)8月21日、大阪市生まれ。PL学園では2年春、夏に甲子園出場。2年夏の大阪大会では5本塁打を放つなど高校通算23本塁打。10年ドラフト2位で中日入団。立浪がつけていた背番号3を引き継ぐ。中日では実働3年で34試合4安打、打率1割4分3厘と伸び悩み、14年オフに戦力外となり巨人に入団。175センチ、73キロ。右投げ両打ち。今季推定年俸550万円。