竜の“1番星”が、また輝きを放った。中日の1年目遠藤一星内野手(26)が4回に右翼席へ先制4号3ランを放った。幼少時代から憧れた広島黒田との初対戦で値千金の豪快アーチだ。ドラフト7位のルーキーが持ち前の長打力を武器にレギュラーに定着。チームの3連勝に貢献した。勢いのある若竜が、あきらめない戦いの推進力になる。

 まるでホームラン打者のような放物線だった。4回2死一、二塁。7番遠藤が1ボールから広島黒田の変化球に反応した。「必死だったので何にも覚えてない。なんとか1本打てて良かった」。無我夢中で振り抜いた打球は大きな弧を描いて右翼席に達した。

 相手のマウンドに立っていたのは自身初対戦の黒田だった。「スーパーピッチャーなので…」。幼少期から知っている大スター。2回の第1打席は元メジャー右腕に圧倒された。外角からストライクゾーンに入ってくる「バックドア」に屈して見逃し三振。だが「1打席目の反省があったので2打席目があった」としっかりと球筋をインプットした。

 強豪がひしめく社会人野球出身の即戦力といえども、週6試合という日程はプロ独特だ。7月からレギュラーに定着し、コンスタントに結果を残したが、この試合前までの5試合は16打数1安打。夏バテ気味だった。14日巨人戦ではスタメン落ちも経験。「バットが遠回りしている」とコーチ陣と修正に努めた。

 恥ずかしがり屋だが、ベンチの盛り上げ役としても貢献している。4回にダイヤモンドを駆け抜けると、ベンチ前で待っていたのは平田と亀沢。3人で一斉にテレビカメラに向かって「おっはー!」。「試合前に打ち合わせがあるんです。そこに巻き込まれる形で…」(遠藤)。ファンサービスの意味も込めて、毎回違う決めポーズを考えている。

 これまで3本塁打を放った試合は3連敗だった。「僕もずっとそれを思ってたんです」。何よりもチームの勝利がうれしい。お立ち台では新人らしからぬ口調で「残り試合はまだある。僕たち選手は全然諦めていません!」とファンに語り掛けた。「疲れはみんなあると思うけど、僕なんかまだ30数試合しか出ていない」。まさに即戦力ルーキー。遠藤が、まだ遠くにあるCS進出の原動力になるかもしれない。【桝井聡】