黒田は黒田だった。広島黒田博樹投手(40)が、日本復帰後初の中4日登板で巨人を相手に7回104球、8安打1失点(自責0)の熱投で8勝目を挙げた。序盤から毎回のように走者を背負いながら要所を締めた。最大のピンチとなった6回2死満塁は冷静にけん制で刺した。前回18日中日戦で右手に打球を受けた影響を感じさせず、巨人戦は復帰後初勝利で、通算21勝目。チームを自力V消滅の危機から救った。

 黒田が技をみせたのは、同点の6回だった。2安打と四球で2死満塁。サインは二塁へのけん制だった。ショートが二塁に入った、そのときだ。三塁走者の巨人亀井が本塁を狙って動いたのを、見逃さなかった。瞬時に三塁けん制に切り替え、アウトに。「ひと呼吸置いたら間に合わないと思ったので、早めにベース上に投げた。ラッキーなプレー。今日は絶対にツイていると思った」。運を強調したが、それだけでは済まされない。日米で通算190勝目をつかんだ右腕の技術が、そこにあった。

 序盤は球数がかさんだ。2回までに35球を要した。3回は味方の拙守に足を引っ張られ、1点を失ったが、尻上がりに調子を取り戻した。「石原がうまくリードしてくれて、お互い苦しみながら抑えられた」。4、5回は3者凡退。球数もそれぞれ10球で終えた。

 「(前日8回1失点と好投した)昨日の福井に勇気をもらった。あいつの投球を見て自分もやらなければいけないと思った。見ていてくる(胸を打たれる)ものがあった」

 開幕前「昔の自分を見ているようだ」と励まし、シーズン中もブルペンでの投球を見学させた後輩の成長した姿に期するものがあった。この日黒田は直訴して7回のマウンドに上がり、104球を投げきった。

 前回18日中日戦で打球を右手に受けた。直後の投球練習では、けいれんしていた。この日も打席では右手首にサポーターを巻いた。それでも、これまでの中6日からおとこ気で、広島復帰後初の中4日で先発。「そこまで気にならなかった」。前回サヨナラ負けを喫した巨人に雪辱を果たし、日本復帰後では初となる巨人戦通算21勝目を手にした。

 緒方監督は「今後も間隔を詰めて投げていって欲しい。こういう姿に奮起してもらいたい」と話した。この日、自力V消滅危機からチームを救った黒田の戦う姿勢が、これからの広島に求められる。【前原淳】

 ▼中4日で登板した40歳6カ月の黒田が8勝目を挙げた。巨人戦の白星は07年7月14日以来通算21勝目(18敗)。40代投手の巨人戦勝利は14年8月7日三浦(DeNA)以来10人目で、広島では97年4月16日大野(41歳7カ月)に次いで2人目になる。中4日で先発勝利の40代投手は08年8月17日山本昌(中日)以来だが、この日は相手先発が19歳11カ月の田口。40代と10代の先発対決は10年4月4日下柳(阪神=41歳10カ月)-伊藤(中日=19歳2カ月)以来14度目。このうち40代投手の勝利は07年4月25日吉井(オリックス)以来4度目で、セ・リーグでは初めてだ。