マエケン攻略、今度こそ! 阪神鳥谷敬内野手(34)が虎の天敵・広島前田の立ち上がりを攻め込んだ。初回、先頭で二塁打を放ち犠打から福留の犠飛で先制ホームを踏んだ。3回にも安打を放ち、通算安打は球団3位の和田豊(現監督)と並ぶ1739本となった。指揮官の誕生日に白星は贈れなかったが、勝負の9月を引っ張る男の覚悟がみえた。

 乾いた音色を響かせ、甲子園の雰囲気を一変させた。1番鳥谷がマエケン攻略法を体現した。1回、2ボール2ストライクから真ん中付近に入った直球を見逃さない。左中間にライナーを弾ませ、いきなり無死二塁の好機をつくった。2番上本の犠打で三塁進塁。3番福留の左犠飛でホームベースを駆け抜け、勢いのままゴメスの手と手をぶつけ合わせた。

 鳥谷 初回の点の取り方は良かったと思います。

 侍ジャパンのエース格、難敵前田は何度もスキを見せてはくれない。じっくりとボール球を見極め、数少ない失投を確実に仕留めるしかない。投手なら誰もが慎重になり、手元が狂う可能性が高くなる立ち上がり。お手本通りの流れで先制点を奪った。

 指揮官の53歳誕生日。2年目の05年から1軍打撃コーチ、内野守備走塁コーチ、監督と立場を変えながら、首脳陣と選手という立場で11年目を迎えた。節目の1日に白星を贈ることができず、厳しい表情のままベンチを後にするしかない。

 3回2死からは通算1739本目の安打を左前にはじき返し、球団歴代単独3位の指揮官和田豊に並んだ。前田から4打席で2安打1四球と上々の数字を残しながら、記録については「良かったです」とひと言だけにとどめた。

 そもそも、シーズン中は個人記録に一切興味を示さない。開幕直前の3月下旬、今季達成する可能性が高い記録表を手渡された時も「本当にどうでもいいんだって」と笑い飛ばした。この日は9月初戦に敗れ、2位ヤクルトにゲーム差なしまで迫られた。鳥谷にとって、それだけが事実だ。

 和田監督 現状の得点パターンはトリが出て、進めて、孝介(福留)がかえすところしかない。

 4番ゴメスが完全復調といかない今、キャプテンにかかる負担はいやが応でも大きくなる。さあ、踏ん張りどころ。9月、背番号1が本領を発揮する季節だ。【佐井陽介】

 ▼鳥谷が通算安打数を1739とし、阪神球団3位の和田豊に並んだ。通算1664試合目での到達。和田は自身の現役最終戦となった1713試合目で1739安打目を打っており、鳥谷はこれを49試合上回った。今季119試合に出場して128安打で、シーズン153安打ペース。今季の安打ペースを維持すれば、再来年17年に2000安打を達成し、球団1位の藤田平2064安打を超える見通しだ。