阪神が3回に打者11人で7点を奪う攻撃で中日を圧倒し、首位を守った。2日に甲子園で小型無人機「ドローン」を飛ばして厳重注意を受け、打撃不振も重なり4番から降格されたマウロ・ゴメス内野手(30)が復活。騒動後初、14打席ぶりの中前2点適時打で攻撃参加した。ナインの激励にも包まれドローン・ショックを克服。3連勝でヤクルトに1・5ゲーム差、巨人に2・5ゲーム差と抜けだした。

 三塁側ベンチの仲間たちが次々に拳を突き上げる。これが猛虎ファミリーの絆だ。3回、悩めるゴメスに待望の1本が飛び出した。2点を先制し、なおも1死満塁。2番手小熊の内角フォークにミートとはいかずも、低い弾道のハーフライナーで二遊間を抜いた。14打席ぶりの安打は2点打。この回7得点の中心を担い、チームメートに感謝した。

 「最近打てていなかったけれど、みんなが作ってくれたいい流れに乗っていけた。1本打てて良かった」

 前夜、“家族”の優しさが身に染みた。中日戦に完勝後、向かった先は名古屋市内のしゃぶしゃぶ店。ベテラン勢が発起人となり、選手だけの決起集会が開催された。極上の肉を沸騰した湯に泳がせながら、V奪回へ一致団結。宴もたけなわ、店を出ようとした時だ。ここぞとばかりにナインから強烈にいじられた。

 「ドロ~ン!」「ドロ~ン!」

 忍者のように人さし指を縦にして姿をくらます。「ドロンします」ポーズを笑顔で連呼。「もう勘弁してくれよ~」。苦笑いで“攻撃”をかわしながら、気遣いに心の底から感謝した。

 3日前の2日、広島戦前の練習中に甲子園で小型無人機「ドローン」を飛ばし、球団から厳重注意を受けた。打撃の調子も上がらず、翌3日は来日後初めて先発試合で4番を外れた。

 前日4日中日戦を終えた時点で3試合連続ノーヒット。猛省と苦悩の最中で決起集会に参加していた。あえてネタにして、少しだけ肩の力を抜いてもらえれば…。ナインの優しさに気づかないわけがない。

 6回と9回にも快音を響かせ、8月5日広島戦以来、1カ月ぶりの今季4度目猛打賞。復調を印象づけ、日本一になった85年以来の中日戦8連勝に導いた。

 「みんなが勝利に貢献しようと一丸になっていた。自分もこれから、この調子を維持して勝利に貢献できるように頑張りたい」

 反省の気持ちは忘れない。厳しい表情のまま巻き返しを誓った。2位ヤクルトに1・5ゲーム差。あらためて1枚岩になった猛虎軍団に、涼しげな追い風が吹き始めた。【佐井陽介】