中日の和田一浩外野手(43)が今季限りで現役を引退することが11日、分かった。近日中に会見を開く。プロ19年目の今季はシーズン129試合を終えてスタメン出場は56試合。レギュラーに強いこだわりを持つ男にとって、歯がゆい状況が続いていた。今年6月には史上最年長で通算2000安打を達成。類いまれな打力はまだ大きな魅力だが、ユニホームを脱ぐ決意を固めた。

 誰からも愛された「ベンちゃん」がバットを置く。複数の関係者によるとすでに現役を退く覚悟を決めたようだ。大学、社会人を経てプロ19年目。43歳の今でもチームにとって戦力であることに間違いないが、球団の若返りを図りたいという方針を理解。水面下で来季の戦力構想から外れている旨を伝えられ、中日のユニホームを最後に現役生活にピリオドを打つことを決めた。近日中にも会見し、正式に表明する。

 岐阜出身の和田は96年ドラフト4位で西武入り。捕手から外野手に転向したのをきっかけに打力で生きることを決意した。独特の打法で30歳でレギュラーをつかむと、努力が実を結び05年に首位打者を獲得。07年オフ、フリーエージェント(FA)で幼少時からのあこがれだった中日に移籍し、当時監督だった落合GMの打撃理論を吸収して、さらに技術を磨いた。

 球界の常識を覆した。35歳の07年から4年連続150安打以上を放ち、38歳の10年には自身最多の171安打をマークしてMVPを獲得。今年6月11日のロッテ戦(QVCマリン)では、史上最年長となる42歳11カ月で通算2000安打を達成した。鍛え上げられた体と卓越した技術。遅咲きのヒットマンは、寄る年波に逆らうように成績を残してきた。

 ただ、40代に入ってからはケガとの闘いでもあった。昨季は2000安打まであと15本と迫った8月に死球で右手首を骨折。オフには長年、豪快なスイングを支えた両膝が悲鳴を上げた。11月には右膝を手術。今季は試合後、両膝をぐるぐる巻きにアイシングする姿が、痛々しかった。

 ファンから愛され、チームメートから慕われた。4人の子どもを持つ良きパパで、元NHK看板ディレクター和田勉さんにちなんだ愛称「ベンちゃん」はファンの間でもおなじみだ。球団は功労者である和田に、ファンに別れを告げる引退試合も用意するとみられる。今季の残り試合は14試合と、現役でプレーする背番号5を見られるのも、あとわずか。セ・パ両リーグで活躍し、一時代を築いた希代のヒットメーカーが、グラウンドを去る。

 ◆和田一浩(わだ・かずひろ)1972年(昭47)6月19日、岐阜県生まれ。県岐阜商2年の春夏に甲子園出場。東北福祉大では2年秋に仙台6大学リーグ首位打者。神戸製鋼から96年ドラフト4位で捕手として西武入り。02年に外野手にコンバートされ、優勝に貢献。05年は首位打者、最多安打。07年オフにFA宣言して中日移籍。38歳の10年に37本塁打、93打点、打率3割3分9厘でリーグ優勝に導いてセ最年長MVPに輝いた。今年6月に通算2000安打、8月に史上3人目の両リーグ1000安打を達成。182センチ、90キロ。右投げ右打ち。血液型O。今季推定年俸2億円。家族は夫人と3男1女。