ヤクルト小川泰弘投手(25)が、圧巻の投球で、チームを2勝1敗に導いた。前日14日に先勝を許した第2戦に先発。巨人打線を8回5安打無失点に抑えた。序盤は制球に苦しみながら、粘りの投球を貫いた。今シーズン前半戦は4勝6敗と負け越していた。苦しい時期も経験しながら大一番で結果を残した。

 流れを変えた。4点リードの7回。小川は、先頭で阿部を迎えた。第1、2打席で安打を許していた。ともに内角直球。前日は5打数4安打と勢いある打者に対して、内角ギリギリを142キロ直球で突き、捕邪飛に抑えた。「打たれっぱなしでは格好がつかない」。主軸をシャットダウンし、主導権を渡さなかった。

 スタートから、自分のペースだった。初回、先頭立岡に左前打で出塁を許し、無死一塁。片岡の打席で、立岡をけん制死に仕留めた。「足を使ってくると思っていた。速いけん制を見せていこうと思う中で、アウトに出来たことは大きい」と、どっしりとマウンドに立った。2回1死満塁でも、顔色一つ変えなかった。小林、マイコラスをカットボールで手玉に取った。「強気な姿勢で最後まで冷静にいけた」。3万1274人と超満員の神宮の中で、心を乱すことはなかった。

 この1戦に懸けていた。今季は満足といえるシーズンではなかった。春季キャンプ中に左脇腹の張りを訴えた。開幕投手を務めながら、前半戦は4勝6敗。「本気で前半戦のことは、忘れたいです。出来ることなら、なかったことにしたい」とまで言った。だからこそ、シーズンを終えても気は抜かなかった。「疲れを取るというよりは、追い込みました」とランニング、ウエートトレーニングの量を増加。全ては自分へのいら立ちがあったから。「1年を通して、満足できなかった。何とかチームの日本一に貢献したい」。試合に入れば、熱い闘志は心に秘め、冷静に打者と向き合った。

 1勝1敗で迎えた1戦。「連敗だけはできなかった」。前夜は、エース石川が負けた。打線も湿っていた。不穏な空気を小川が、断ち切った。真中監督も「打たれたのも阿部くらい。最後まで根気強く投げてくれた」と称賛した。「気負うことなく、緊張することもなく、いつも通りいけた」とライアン。プロ3年目で初めて味わうCSの舞台にも、威風堂々と立ち居振る舞った。【栗田尚樹】

 ▼小川が8回を無失点に抑えCS初登板を白星で飾った。CSでヤクルトの先発投手は延べ16人が登板して5勝8敗となったが、投球回数別の人数を出すと、5回未満6人、5~5回2/34人、6~6回2/34人、7~7回2/31人、8回以上1人。これまでは11年ファイナルS第2戦石川の7回が最長で、8回以上投げたヤクルトの先発は小川が初。