阪神金本知憲新監督(47)が19日、大阪市内のホテルで就任会見を行った。第33代指揮官は、理想の監督像を「勝つ監督」と断言、その手段として最も大事なものに「闘志」を挙げた。3年連続終盤の失速で優勝を逃してきた虎を戦う集団にすることを誓い、今日20日から選手と個別に面談することも示唆した。なお、契約は3年で推定年俸1億2000万円。背番号は未定。

 強く、頼りがいのある猛虎改革宣言だった。200人の報道陣、50台のカメラに囲まれての就任会見。指導者経験なしで伝統球団の指揮官を引き受けた金本監督は、すっきりとした表情でこう言った。

 「不安と希望がかなり入り交じっています。しかし今は希望といいますか、やってやろう! という強い気持ちがあります」

 託されたのは改革だ。南球団社長をはじめ、球団側の「1回壊してでも立て直したい」という熱意を意気に感じ、決断したという。選手を育て、チームを変える。難題に対して球団は長期スパンでの計画を提示した。だが、金本監督は「勝利」と「改革」は切り離せないという確固たる信念を強調した。

 「すべては勝つため、優勝するためにやっていく。改革とか、再建とかが優先なのはあり得ない。勝ちながら立て直していく」

 狙うは1年目から優勝。では、具体的にどう勝たせるか。金本監督が最も重要視するものは明確だった。

 「何が何でもという気持ち。精神的なことを軽く見てはいけない。そこは絶対に基本だから。何をするにしても。ただひょうひょう淡々とこなしていくような試合は避けたい。避けたいというか、僕が許せない。どうしても選手はそうなりがちになるんだけれど、そこをグッとむち打って、手綱を締めてね」

 目指すチーム像は「結束力のある、戦う集団を作っていきたい」とも語った。そして、技術、体力を極限まで磨き上げた男が最も大事なのは「闘志」だと言う。その説得力に場の空気は張り詰めた。

 期待の若手に江越、横田、陽川の名前を挙げた。一方で実績ある鳥谷、福留、福原、安藤にもさらなる成績アップへの期待を示した。今日20日、監督として初めて選手と顔を合わせる。全体へのメッセージはもちろん、いきなり個人的に話し合うこともあるという。

 「何人かいます。みんなにも言いたいことがある」

 自らの考えを伝えるために初日から“個別面談”も実施する構えだ。

 理想像は「勝てる監督」だと言い切った。

 「最近では落合さんとか原監督とか。2人の共通点は厳しさだと思う」

 厳しさを連想させたかと思えば、取材の合間に自然とジョークが飛び出す。星野監督は就任時、鬼になると宣言したが「僕は気が優しいでしょ。鬼にはなれない」。緊迫感の中に突如、爆笑が巻き起こる。

 「明るくないチームは好きじゃない。ふざけることは許さないけれど、明るく前向きにやるのは大好き」

 明るく、厳しく、そして強く。まさに「アニキ」のイメージにぴったりの猛虎改革像が浮かび上がった。【鈴木忠平】

 ◆金本知憲(かねもと・ともあき)1968年(昭43)4月3日、広島県生まれ。広陵では甲子園出場ならず。東北福祉大を経て91年ドラフト4位で広島入団。00年にはトリプルスリー(3割1分5厘、30本塁打、30盗塁)を達成。02年オフ阪神にFA移籍。04年に打点王、05年はMVPに輝いた。06年には904試合連続フルイニング出場の世界記録を樹立し、1492試合まで伸ばした。連続1766試合出場は歴代2位。ベストナイン7度。12年に引退。現役時代は180センチ、88キロ。右投げ左打ち。