侍ジャパン打線のど真ん中におかわり君が帰ってきた。6日の強化試合プエルトリコ戦で死球を受け、右手甲の打撲で欠場の可能性もあった中村剛也内野手(32)が、4番DHで韓国戦に先発出場した。得点には絡まなかったがマルチ安打で周囲の心配を一掃。ドッシリと中軸に根を生やし、打線を5得点に導いた。
心は動かなかった。右手甲の打撲、開幕戦の韓国戦、4番。あらゆる要素も中村剛の心を乱すことはない。「個人的にはレギュラーシーズンと同じでリラックスしてできた。なんか知らんですけど」。威風堂々と「4番中村」のアナウンスを背に、世界舞台の打席へ歩んだ。
威圧感を放ち続けた。初回、心配ご無用とばかりに痛烈な中前打でチーム初安打を刻む。3回にも左前打を放ち、日本が過去に何度も対戦した左腕の金広鉉に重圧をかけ、降板へといざなった。5回には左へ、8回には右中間へ大飛球を放った。「最初は(バットの)ド先、次は詰まり。ちょうどその間がほしいんですけど」と苦笑いしたが、存在感は群を抜いていた。
肉体も心も折れなかった。プエルトリコ戦で右手に死球を受けた。前日7日は緊急帰京し、再検査を受けて練習も休んだ。首脳陣は韓国戦当日まで腫れの引き具合も見て最終決断を待った。だが中村剛は早い段階で決意を胸に秘めていた。「しょせん、打撲ですから。折れてなかった時点で出るつもりだった」。試合前には分厚い両手を見せ「ちょっと腫れています。あまり変わらない? ハイ」と自虐的に笑う余裕もあった。
不動の心を認められての4番だった。ソフトバンク王会長は小久保監督とのテレビ対談で4番論を語った。「4番の姿はチーム、選手のよりどころ。中村は打てなくてもケロッと帰ってきて次の打席でポーンとホームランを打つ。本当に4番型の選手」。第1回WBC優勝監督の目にも理想として映った。
中村剛も同じ哲学を持つ。「4番は打った打たないを顔に出しちゃいけない。周りに与える影響がある。自分は気恥ずかしさもあるけど、喜怒哀楽を出さずに平常心でプレーすることがいい結果につながる」。野球で涙を流した記憶もほとんどない。大一番でも日常のようにプレーした。
世界一を目指す戦いがここに始まった。「優勝するために勝ち続ける。選ばれた時からずっと思っている」。侍の4番として打線に野太い1本線を通す。【広重竜太郎】


