阪神への復帰が決まっていた藤川球児投手(35=四国IL・高知)が24日、大阪市内のホテルで入団会見に臨み、古巣への思いに涙を見せた。再入団を決断した一因として虎ファンの存在を挙げ、言葉を詰まらせた。12年以来、4年ぶりのタテジマに戻り、背番号18をつける。2年契約の総額4億円(推定)で正式に締結。金本知憲監督(47)とともに日本一を目指し、夢はでっかくパレードだ。

 胸からこみあげてくる感情を抑えることはできなかった。古巣復帰を決断した理由を問われ「球場で声を掛けてくれるファンの方、そのほとんどが阪神ファンで、また日本中で…」と言いよどむと、もう言葉にならない。司会者が「ファンの後押しが…」とつないでも約1分間の絶句。「ちょっと待ってください…」。おしぼりで目頭を押さえて「人の心です」と短く話すのが、精いっぱいだった。

 12年を最後に大リーグに挑戦していた伝説の剛腕がタテジマに復帰する。13年には右肘を手術。米球界で傷つき、不本意な成績に終わった。今年5月下旬に1度は阪神のオファーを断って、故郷の高知でプレーしていた。再出発を後押ししてくれたのはファンの声だった。「人として人情を大事にしているから。人の優しさを覚えたから、また、帰ってきました」。タクシーに乗れば運転手に「戻ってくれよ」と声を掛けられた。その思いを痛感した。

 そのなかで何より大切にするのが、アスリートとしての力量だ。「実力を認められないといけない」。独立リーグでの先発を何度も視察に来た阪神編成部の思いも分かっていた。古巣から再オファーが届くと、金本監督と会って話した。必要とされる場所で勝負する。ヤクルトなど他球団も獲得を望み「悩んだ」とも明かす。そのなかで、やはり阪神の思いは格別だった。

 「現場というか、フロントの方です。僕は実費でやっていたから、移動でどれだけかかって、宿泊費はこれくらいとか分かっています。わざわざお金を出して来て、ありがたみを感じていた。(視察の)回数はタイガースが一番多かった」

 ファンにも、球団からも後押しされて再入団を決断した。晴れて心はタイガースだ。「これからはまたタイガースのことを全身全霊で、グラウンドでいつ倒れてもいい覚悟でやれると思うと本当にうれしく思う」と言い切った。かつて阪神では絶対的な守護神に君臨したが、起用法は金本監督に一任する。藤川には新たに抱く大きな思いがある。

 「僕がタイガースに戻って一番は、パレードをしたい。ファンの人が一番喜ぶ瞬間。日本一はできていない。金本監督も絶対にしたいはず。大将がそうなら、だから、僕も来たと思う」

 命をかけて戦える場所がここにはある。「冒頭で涙を流したように見えたかもしれませんが、涙はこぼれていません。僕じゃない。(虎党の)皆さんに泣いてほしい」。どこまでも粋な浪花節だ。もう勝負師の顔になっていた。【酒井俊作】

 ◆藤川球児(ふじかわ・きゅうじ)1980年(昭55)7月21日、高知県生まれ。高知商から98年ドラフト1位で阪神入団。リリーフに専念した05年、才能が一気に開花。ウィリアムス、久保田との救援トリオ「JFK」の中核を担った。通算220セーブは球団最多、140ホールドポイントは同3位。12年オフ、海外FA権を行使しカブス入り。今季レンジャーズに移籍したが、5月22日に解雇。帰国し四国IL・高知でプレーした。183センチ、86キロ。右投げ左打ち。