2016年は「男気伝授」の年になる。広島黒田博樹投手(40)が新年の誓いを口にした。昨年12月に下した現役続行の決断には、新たな使命が加わることを承知。あと7勝とせまる日米通算200勝はあくまでも優勝への通過点。チームを強くするために、後輩たちに伝えていかなければいけないものがある。復帰2年目の今季、黒田はまた違う男気を見せてくれそうだ。

 現役続行か、引退か-。15年シーズン終了後、黒田が悩みに悩み抜いた末に出した答えは、現役続行だった。今年2月に41歳を迎えるベテランには大きな重圧がかかる。だが、すべてを受け入れる覚悟はできている。

 「(広島で)エースと言われてからプレッシャーのないマウンドなんてほとんどなかった。米国であろうが日本であろうが、僕は常に100%のプレッシャーを感じてマウンドに上がっている。それは引退するまで背負わないといけないと思っている」

 退路は断った。揺れる気持ちだったのを、後輩たちに引き留められた。黒田とともに戦いたい、学びたいと願う言葉が男気の琴線に触れた。

 「必要とされている部分を見せられると、振り切ってまで(やめる)というのは難しい。特にまだまだ伸びしろのある投手がたくさんいるので、少しでもプラスになるなら」

 昨季は福井や野村にアドバイスを送り、大瀬良にはツーシームを伝授した。自身8年ぶりの日本球界に適応する難しさを感じていたのも事実で、2年目の今年は「昨年よりは視野を広げて、伝えていけることは伝えていきたい」という。日米で培ってきた技を惜しみなく注いでいく。

 今年早々には前田がポスティング制度で大リーグに挑戦することが確実視される。だが、黒田は契約更改後「間違いなく優勝を目指せるチームになれる」と言い切った。

 「選手が発奮材料にしてやるしかない。選手1人ひとりがどういう気持ちを持って今年を迎えたかが大事かなと思います」

 1年ともに戦ったチームに可能性を感じている。プロ20年目には日米通算200勝がかかる。

 「やるからにはそれなりの成績を残さないといけない。通過点というか、通過したい」

 北別府学以来、球団2人目となる大記録達成の先には、セ界の頂点が見えている。【前原淳】

 ◆黒田の現役続行VTR 15年10月7日の最終戦後に「自分の中では完全燃焼できた」と言葉を残し15日に米ロサンゼルスに渡った。11月27日に広島バッテリー会に参加し「一番は戦力にならないとダメ」と前向き発言。その3日後には「今年を超えるモチベーションを探すのは難しい」と再び引退をほのめかした。12月7日に広島市内で鈴木球団本部長と交渉。翌8日に電話で「やります」と現役続行の意思を伝えた。