足りなかったピースが埋まろうとしている。前オリックスのヤクルト坂口智隆外野手(31)が、古巣・オリックス戦でマルチ安打を放った。オープン戦に10試合出場し、27打数11安打。打率4割7厘と安定感ある数字をマーク。「1番」の座をほぼ当確とした。昨季、リーグ優勝を果たしたチームの課題は、切り込み隊長の不在だった。「1番・坂口」の新オーダーで、連覇&日本一を目指す。

 燕の新たなリードオフマンが、古巣を相手に躍動した。初回、先頭。坂口はカウント2-2から、昨季までのチームメート・金子の内角高め144キロ直球をとらえ、鮮やかなセンター返しとした。「(金子は)対戦したことはない。球界を代表する投手から打てたことはよかった」。1点を追う6回無死一塁では右前打。オープン戦10試合で、4度目のマルチ安打と勢いが止まらない。

 こんな切り込み隊長をチームは求めていた。昨年、リーグ優勝を果たした要因は2、3、4番打者の存在が大きい。川端は首位打者、山田はトリプルスリー、畠山は打点王を獲得。その中で上田、比屋根らが交代で入る「1番」は流動的だった。連覇と日本一を目指すチームに、打線の厚みは不可欠。「1番」を固定化することで、さらなる得点力に期待はかかる。真中監督は坂口について「このままいけば、(1番・坂口)なるでしょう」と合格点を与えた。

 アピールを続ける坂口にとって、この試合は違った意味合いもあった。古巣との初対戦。「ビジターは初めてなので、ロッカーの使い方がわからなかった」と言い、「オリックスのファンには最後、グラウンドで姿を見せられないまま、別のチームに変わった。こうやって元気な姿を見せられたことを感謝の気持ちと受け止めてほしい」と、しみじみ語った。打順について、「僕は気にしない。試合に出られれば、何でもいい」。新天地で輝いてみせる。【栗田尚樹】