巨人で選手が自チームの勝敗に絡んで金銭授受を行っていたことが判明した問題に絡み、阪神と西武でも選手間の金銭のやりとりがあったことが15日、分かった。チームが勝った場合、試合前の円陣で「声出し」した選手が、他の選手から「祝儀」を受け取るシステム。野球賭博とは違い、敗退行為につながらないとして、NPB(日本野球機構)は野球協約違反には該当しないとしているが、熊崎コミッショナーは賭博問題を引き起こす要因の1つになったと捉え、徹底解明する決意を表明した。

 ロッテ山室晋也球団社長(56)が同日、野球賭博問題の解決に向けた提言を行った。「個人的意見」と前置きした上で、「再調査にあたっては“司法取引”のようなものがあっていいのではないか」と話した。

 司法取引とは、裁判で検察と被告が行う。罪状を認めたり、捜査に協力したり、共犯者を告発したりすることと引き換えに刑を減免する制度だ。日本の法制度上は認められていないが、山室社長は有効性を指摘する。「前回の調査と同じことを同じように聞いても、『やってません』で終わるのではないか。それで、再調査の意味があるのか。たとえば『今、正直に話せば、ペナルティーを考慮する』と。それで正直に打ち明けられ、救われる人がいるかもしれない」と続けた。

 決して、賭博行為を行った人が他にもいると決めつけているわけではないし、賭博行為の罪を軽視しているわけでもない。ただ、最初に賭博問題が発覚した昨秋の調査で、巨人高木京の名前は挙がらなかった。従来の調査には限界があるのも事実だ。「再調査で問題なしとなって開幕を迎えた後、万が一、新たな関与者が出れば大変なこと。ダメージは、ずっと大きくなる。本当にうみを出し切る工夫が必要」と強調した。

 課題はある。福田、笠原、松本竜の元3投手は無期失格となった。高木京も重い処分は免れない。仮に新たな関与者が取引により無期失格を免れれば結果的に、これまで黙っていた人の方が得をするという見方もできる。既に出た処分との整合性をどうするか。取引の過程で情報が外部に漏れないようにする必要もある。

 山室社長は元銀行マン。司法取引について「独禁法が、その考えに近い」と言った。違法な談合を行っている会社が自ら公正取引委員会に最初に報告すれば、課徴金が減免される制度がある。クリアする課題は残るが、ビジネスの世界で生きてきた同社長ならではの建設的な提言といえそうだ。【古川真弥】