新監督にウイニングボールを贈ったのは、エースだった。巨人菅野智之投手(26)が、7回無失点の快投で3年連続で開幕戦勝利。4年連続の斎藤(現2軍監督)以来、球団2人目の快挙を達成した。「高橋監督の最初の試合ですし、開幕戦にかける思いは強かった」。試合後、小学3年生の時に初対面した指揮官に白球を手渡しし、「うれしいですね」と感激させた。

 1回、マウンド上でスッと目を閉じ、集中力を高めた。「今シーズンに懸ける思いとこの東京ドームで1年間戦い抜くという思いを込めて」。開幕戦を前に、色紙に記した言葉は「覚悟」。「チームが勝つために投げる覚悟、マウンドを守り抜くという覚悟、いろんな覚悟を持ってやる」。

 16年の初球は、オフに磨き上げたこん身の150キロ直球だった。2回2死一、三塁、5回2死一、三塁のピンチでも、ウイニングショットは直球。「(小林)誠司も強気で信じてくれたし、ストレートの重要性を再認識した」119球の熱投だった。

 通達前に、開幕のマウンドに立つ覚悟を固めた。正式に伝えられた2月28日の2日前。自宅で昨年の開幕戦とマジック点灯を許した9月27日のヤクルト戦のDVDを見返した。「開幕で勝っても、悔しさしかないです」。鮮明に残る1コマ、1コマを目に焼き付け、リベンジを誓った。

 今季の投球テーマに「圧倒」を掲げ、秘めたる思いをグラブに込めた。王冠をモチーフにした刺しゅうを入れ、14年に獲得した最優秀防御率、ベストナイン、最優秀選手のタイトルを丸印で示した。「今年はこれをもっと増やせるように」。エースは勝って、その力を証明する。【久保賢吾】

 ▼菅野が今年も白星。開幕投手の3年連続勝利は12~14年摂津(ソフトバンク)以来で、巨人では93~96年斎藤雅(4年連続)に次いで2人目。初の開幕投手から3年連続勝利は球団史上初めてだ。巨人の開幕投手で通算3勝以上は別所4勝、斎藤雅4勝、堀内恒3勝、西本3勝に次いで5人目となり、プロ4年目の菅野が早くも球団最多記録へあと1勝に迫った。