中日の新大砲ダヤン・ビシエド外野手(27)が球史に名を残す1発を放った。4回1死から中越えに運ぶ3号ソロ。新助っ人の開幕から3試合連続アーチは史上初だ。一時同点2点打も放ち、2試合連続の3安打。打率は驚異の6割1分5厘だ。惜しくも連敗は食らったが、大砲が最高の状態で明日29日からのナゴヤドーム開幕戦に臨む。

 マウンドの阪神藤川がバックスクリーン方面を向いて苦笑いしていた。手が付けられない-。ビシエドを生で目にした人にも、テレビ観戦の人にも、そう印象付けた「苦笑い」に違いない。

 4回1死。初球に来た112キロの緩いカーブを捉えた。阪神サイドは安全な選択をしたつもりだろう。しかし強じんな下半身は崩れることなく、がっちり打席の土をつかんだ。強烈な遠心力で放たれた打球は、大きな弧を描いてバックスクリーンを直撃した。

 3試合連発。初戦は直球、2戦目はチェンジアップを打っていた。初めて見る投手を相手に、どんな球にも対応してきた。象徴的なシーンがあった。2点を追う5回1死二、三塁で藤川に食らいつき、9球目の直球をしぶとく右前に落とす一時同点打。右腕を疲弊させ、KOにつなげた。

 「感覚はとてもいい、いいスイングができている。チームもいい状態で3連戦を戦ったと思うよ」。敗れただけに浮かない表情で球場を後にした。「すごいですね。ずっといい感じで打ってくれている。ビシエドの前(に出塁したの)は1回だけか」と谷繁監督。前の打者に奮起を求めるのも無理はなかった。

 メジャー通算66発。19歳でキューバから米国に亡命し、23歳だった12年にホワイトソックスで25本塁打を放った超有望株。近年は故障などでマイナー生活だったが、あこがれの「キューバの至宝」オマール・リナレスも所属した中日で猛打を披露している。開幕から2試合連続弾のゲーリーを追い抜き、早くもレコードブックに名を残した。

 「本塁打の話はあまりしなくていいよ。チームが勝つことが大事なんだ」。中日は昨年、12球団最少の71本塁打だった。中日打線はたった1人の存在で間違いなく、他球団の脅威に変わる。バレンティンの年間記録60本。それどころか…。途方もない夢を見せてくれるV砲が勢いMAXでナゴヤドームに見参する。【柏原誠】

 ▼来日1年目のビシエドが開幕戦から3試合連続本塁打。来日初戦から3戦連発は13年キラ(広島)に次いで2人目のタイ記録だが、キラの初出場は7月9日DeNA戦。来日1年目の外国人選手が開幕戦から3戦連発は初めてだ。「1年目」の条件を外した開幕戦からの3試合連続本塁打は08年G・G・佐藤(西武)以来で、中日では初。4試合以上続けたのは89年ブーマー(オリックス)5試合、78年ギャレット(広島)4試合しかいないが、ビシエドは次の試合も打てるか。