新たな「二刀流」伝説が幕を開けた。日本ハム大谷翔平投手(21)が30日オリックス戦(札幌ドーム)で、プロ入り初めて登板予定2日前に「6番DH」でスタメン出場。3点ビハインドの6回無死一塁から、左中間スタンドに2試合連続となる2点本塁打を放った。2本塁打、7打点は、打撃2部門のリーグトップ。チームは4-5で敗れたが、大谷、そしてチームにとって、大きな可能性を感じさせた。

 前日の残像よりも、さらに深く突き刺した。3点を追う6回無死一塁。大谷がオリックス東明の141キロ内角高め直球を振り抜き、左中間スタンドへ2夜連続のアーチをかけた。「打った瞬間いったと思いました。昨日(29日)より打った感じはよかったです。内角寄りは狙ってました。真っすぐ系統かなとは思っていた」。自身の野手“開幕戦”から2戦連発。2本塁打、7打点、打撃2部門でリーグトップに立った。

 クリーンアップの後ろに控えることで、自然と好機で打席が回る。この日の4打席も、すべて走者を置いて立ったもの。「結果的に(走者を)かえせればいいけど、出塁することを考えていきたい」。欲を出さずに自分の打撃に徹することが、結果として役割を果たすことにつながっている。

 プレーボールがかかる3時間ほど前、大谷はブルペンにいた。明日4月1日ソフトバンク戦(静岡)の登板に備え、約30球を投げ込んだ。登板の2日前に野手として出場するのは、プロ入り後初めて。栗山監督は「その準備を3年間やってきたつもり」。投打「二刀流」は、新たな1歩を踏み出した。

 投手と野手、役割が目まぐるしく変わる日々だが、やることが明確になっているから、ぶれない。年末年始、大谷は毎年、目標をシートに記入する。達成すべき数字やそのための手段など、具体的に書くという。すべてを書き出したら縮小コピー。毎日持ち歩く手帳に貼り、シーズン中にも思い立ったら見返す。そのたび、頭の中が整理される。「ピッチングが打席に影響することはないです」。2人の自分を切り離してグラウンドに立つ。

 さあ次は、開幕を託された「投手・大谷」が、意地を見せる番だ。昨季何度も屈辱を味わった王者・ソフトバンクとの最初の顔合わせ。この日の接戦を「勝ちきらないと意味がない」と振り返った。投手は勝敗の行方を支配する。打っても勝てない日はあるが、0に抑えれば負けはない。【本間翼】

 ▼大谷が今季初の2試合連続本塁打。大谷の2戦連発は13年7月10、14日、14年6月29日、7月5日、同8月28、29日に次ぎ、打席に立たない登板試合を挟んだケースを含めて4度目。本拠地札幌ドームでマークしたのは初めて。これで本塁打、打点の2部門トップに立った。