並大抵の新人ではなかった。阪神高山俊外野手(22)が、プロ1号を初球先頭打者アーチで決めた。東京6大学リーグ通算最多安打記録を刻んだ思い出の神宮で、ヤクルト新外国人デイビーズの直球を右翼席へ。新人のプロ1号が初球先頭弾は2リーグ制では史上初めて。勢いに乗ってプロ初の4安打もマークした。試合は延長12回、5時間12分の死闘の末、今季両リーグ初の引き分けに終わった。

 プレーボールからわずか5秒後。まだ日も落ちきらぬ神宮の空に、ひと筋のアーチが描かれた。新人がプロ1号を初球先頭打者で記録したのは2リーグ分立後初。どよめきと歓声が交じり合うダイヤモンドを、高山は表情を変えることなく、さっそうと1周した。

 高山 初めて対戦するピッチャーでしたけれども、見ていくよりも積極的にいこうと思って打席に立ちました。いい形で打てたので「これは行ったかな」という感触はありました。

 完璧だった。メジャー通算43勝右腕デイビーズの真ん中高め135キロ直球を振り抜く。高々と舞った打球が、たやすく右翼席に着弾した。7、8回にも安打を放ち、プロ初の猛打賞。延長11回には4安打目を中堅に飛ばした。

 明大時代、東京6大学リーグの通算最多安打記録を48年ぶりに更新したバットコントロールは、プロでも十分通用している。早いカウントから積極的にいく中での対応力も兼ね備え、リードオフマンとして期待通りの活躍を続けている。

 勝利への執念が、結果を残し続ける原動力になっている。開幕戦、そして3月30日の敗戦後、「僕個人のことは特別気にすることはないんですよ。試合に負けたことが悔しいんです」と決まって口にした。

 それは子どものころから変わっていない。船橋中央シニアに所属していた中学3年の夏。最後の公式戦でソロ本塁打をマークしたが、試合は5回降雨コールド負け。恩師の掛川勉GMは「突き刺さるようなホームランだった。でも『ボールはいらない』って言ってました。負けたからって」と振り返った。

 高山 疲れはありません。次の試合が大事だと思うので、また明日頑張りたいと思います。

 神宮の舞台で放った歴史的な1発。しかし、この本塁打でさえも、これから始まる高山伝説の序章にすぎない。【梶本長之】

 ▼高山が先頭打者本塁打。プロ初本塁打が先頭打者本塁打は、15年4月30日中村(ロッテ)以来、外国人選手を除いてプロ野球30人目で、阪神では98年坪井以来18年ぶり2人目。セ・リーグでは14年鈴木誠(広島)以来11人目で、初球を打ったのは11人のうち前記鈴木誠に次いで2人目(パ2人)。新人でプロ1号が初回先頭打者アーチは、前記中村以来10人目。10人のうち初球を打ったのは、1リーグ時代の44年7月1日藤野(産業)に次いで72年ぶり2人目。