びっくりぽんの快投だ。「第6の男」として先発チャンスをつかんだ岩貞祐太投手(24)が7回4安打無失点。毎回の12三振を奪って約1年ぶりのプロ3勝目を挙げた。昨年まで1年に1勝で終わっていた13年ドラフト1位左腕は、オフに結婚。守るものは家族とローテーションだ。

 無表情だった岩貞が体を震わせて感情を爆発させた。4回。ロペス、筒香に連打を浴びて1死二、三塁とすると、ロマックに四球を与えて1死満塁。ここから強心臓左腕が開き直った。「腕を振ることだけを考えた」。宮崎を二飛に仕留め、続く戸柱を3連続ストレートで空振り三振。最大のピンチを切り抜けると、その後は危なげなく7回4安打無失点。自己最多となる毎回の12奪三振だった。

 「野手の方がしっかり守ってくれた。勝てて良かった。(12奪三振は)梅野の配球のおかげです」

 「第6の男」に滑り込んだ。キャンプ終盤に左肩の違和感でペースダウン。金本監督も「ああ、終わったなと思った」ほどだ。ところが、3月の2軍戦で存在感を発揮。3月21日オリックスとのオープン戦でも5回1失点と踏ん張った。秋山、島本らとのデッドヒートを制した左腕に、ベンチで見守った指揮官も「勢いがあったね。腕を振って。ダイナミックに投げてくれた」と手放しで褒めた。

 これまでと「立場」が違う。昨シーズン途中から制球難を克服するため、プレートの立つ位置を三塁側に変えた。昨年までファームを担当していた香田投手コーチは「いいチェンジアップがゾーンに入りやすくなった」と証言する。オフには台湾のウインターリーグに参加してリーグトップ27奪三振で最優秀投手賞を獲得。1月には能見の沖縄自主トレに志願して参加し、チェンジアップの配球を学んだ。

 プライベートでも「立場」が変わった。昨年11月に横浜商大時代に知り合った女性との結婚を発表した。先週から新婚生活をスタートさせた。愛妻はハンバーグなどの家庭料理が得意。生真面目な左腕は、そんなサポートを受ける度に「やっぱり責任感がある」とマウンドでの活躍を思い描いた。

 「うれしいです。これからもどんどん勝っていきたい。向かっていく姿勢を出して勝っていきたい」

 7回にはプロ初安打も中前に運んだ。次回登板は9日広島戦(甲子園)の見込みで、黒田と投げ合う可能性もある。メッセンジャー、藤浪、能見、岩田、藤川。そして岩貞。3年目左腕の好投で、他球団もうらやむ盤石ローテーションができ上がった。【桝井聡】