粘った、踏ん張った、ホッとした。中日若松駿太投手(21)が投打で完封劇の立役者となった。DeNA戦に先発し、7回8安打無失点。3回には先制の犠飛も放ち、1-0で勝った。4回以外毎回得点圏に走者を置きながらも崩れず、デビューからナゴヤドーム8勝0敗。本拠地の女神は、若さまにぞっこんのようで…。

 ナゴヤドームでの中日若松は強かった。何度も走者を得点圏に背負った。そのたびに、ピンチを自らの手でしのいだ。ビクともしなかった。

 「冷や冷やさせてしまい、ランナーも出てしまい、すみませんでした」

 今年2度目のお立ち台に立ち、はじめに謝罪の言葉が出た。味方の守備にミスもあり3者凡退は4回のみ。ハラハラドキドキさせたかもしれないが、バッテリーで粘り勝った。

 3回2死満塁。7番倉本を内角133キロ直球で見逃し三振に仕留めた。マウンド上の若松はガッツポーズでほえた。スコアボードに「0」を並べるだけではなく、打っては「1」をともらせた。ピンチの後にはチャンスがやってくる。3回、先頭の女房役杉山が右越えの三塁打。打席の若松は「とにかく1点が欲しかったので、その気持ちで打席に立ちました」。短くバットを持った。ベンチのサインは「打て」だった。DeNAドラフト1位今永の140キロ直球を右飛にし、杉山を先制の本塁にかえした。

 杉山と4学年違うが同期入団の絆は絶大だ。若松は「杉山さんの影響です」と私服は、ワニのマークでおなじみのブランド「ラコステ」が多い。グラウンドを離れ私生活でも息ピッタリ。谷繁監督も「粘り倒しましたね。この点差、この状況でですね。メンタル的に若松は弱くない。今日はバッテリーです」と目尻を下げた。

 6回を終わって118球。ベンチも若松本人の頭の中にも「交代」の文字はなかった。チームは開幕から早くも先発ローテーションが定まらない苦しい台所事情だ。昨年10勝を挙げた4年目右腕が先発ローテーションの柱になりつつある。本拠地では8勝を挙げ、黒星ゼロ。開幕から自身2連勝。チームの勝率も5割に引き上げた。ナゴヤドームの若松に敵はいない。【宮崎えり子】

 ▼中日は若松の犠飛で挙げた1点で勝利。投手の1-0決勝打は11年8月9日に能見(阪神)が中日戦で記録して以来。中日の投手では87年8月12日大洋戦の川畑以来29年ぶり。