見据えるのは大一番のマウンドだ。楽天松井裕樹投手(20)が11日、コボスタ宮城で調整を行った。前日10日に打球を受けた右足の治療などをし、今日12日からのロッテ戦に備えた。ここまで7試合に登板し、4セーブで救援失敗はなし。昨年同様に抜群の安定感を発揮している。抑えとして2年目を迎え、目指すは自身の誕生日でもある10月30日に行われる日本シリーズ第7戦。12球団最年少守護神が意気込みを語った。

 春の陽光のように、松井裕の目は明るく輝いた。「今年は誕生日が日本シリーズの第7戦なんです。そこで投げられたらすごいですよね。そこに向かって行くぞと思ってます」。13年以来の単独首位となったチームを象徴するように、勢いのある言葉が飛び出た。

 1試合ごとに調子が上向いている。ここまで7戦に登板し、4セーブ。しかし代名詞である三振は1日の西武戦、4試合目で初めて奪えた。「直球の状態が上がりきっていなかった。ここ2試合で良くなってきた。三振の数も増え、らしさが出てきたのかなと思う。セーブを挙げながら状態を上げていきたい」。

 キャンプ中に左肩の張りが出て、練習量を抑えた。「万全に投げ込んだ状態を100としたら、今年はシーズンインで100であるハズがない」と感じていた。そのため今季は試合でスライダーを多投。「チェンジアップだと直球と球速差が出ていなかった。ならばスライダーの曲がりの大きさでタイミングをずらそうと考えた」とプロ入り2年間でたくわえた経験を生かしていた。

 投球の引き出しの増加が、余裕を生んでいる。カウントを整えるために、曲がりの小さいカットボールも有効に使う。昨年の9月以降に使い始めた。「相手打者の意識にカットボールは植え付けられていないし、1つの球種として成り立ってきた」と手応えがある。直球が走らなければ、違う方法で抑えるという自信。調子は万全ではないが、「今は大事な9月にへばるのでなく、夏場にピークを持って来られるとプラスに考えている」と前向きだ。

 後輩の成長にも刺激を受ける。本拠地ではドラフト1位オコエを愛車に乗せて球場と寮を移動する。「あいつはすごい。成長が早い。倍速でしょ」と笑う。「コボスタでスタンドに放り込むんだからすごいですよ」と打撃が格段に向上していると太鼓判を押す。

 帰り際、「でも、第7戦までは行きたくないな。重圧がすごそう」と笑った。日本シリーズに進出し、もし実現すればファンは13年の田中と松井裕の姿を重ねる。楽天の春の快進撃。旋風の中心に、若き絶対的な守護神がいる。【島根純】