バットを投げ出し、仁王立ちした。1点を追う6回。先頭打者で打席に入ったヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(31)が、巨人戸根の真ん中高め直球を打ち砕いた。「お願いだから切れないでと祈っていたよ」と、右翼ポール際に吸い込まれる同点の3号ソロを見つめた。勢いのままに、同点で迎えた7回2死一塁の打席に入った。山口の甘く入ったチェンジアップを捉え、左中間を破る決勝の適時二塁打。塁上で大きくガッツポーズを決めた。

 契約最終年の今季は、いつも以上に燃えている。一番の理由は「戸田アレルギー」。2軍施設の埼玉・戸田球場は体が合わないという。「戸田に行くと、原因不明のくしゃみに襲われる。トダ、イヤ。トダアレルギーです」。故障で2軍調整にならないためにも、体のケアを怠らない。試合前のマッサージを重点的に行ってから打撃練習を行うルーティンは、「戸田アレルギー」対策でもある。

 13年に60発を放った主砲の活躍で、開幕カードで3連敗した巨人に勝ち越し。今季初のお立ち台に上がると「約束します。近いうちに首位に立って優勝を目指します」と宣言した。真面目な表情を見せたのもつかの間。クラブハウスから出ると、「テキーラ、テキーラ」と満面の笑みでタクシーに乗り込んだ。昨季は度重なる故障で1軍出場15試合。2軍で長い時間を過ごした。キングはやはり、1軍でプレーしている姿がよく似合う。【栗田尚樹】