これぞ新井良太だ。「意識しているわけではない。できればやりたくないんですけどね…」。阪神新井は同点に追いつかれた直後の9回1死、DeNA守護神山崎康の真ん中142キロを捉え、左翼席中段に着弾する決勝アーチ。あまりに感触が良すぎたのか、フォロースルーの際、久々にバットを夜空へ放り投げた。

 開幕は2軍スタート。首脳陣からファーム降格を通達された翌日の3月下旬、鳴尾浜球場で大先輩の安藤に問いかけた。

 「安藤さんはどうやってモチベーションを保たれているんですか?」

 「絶対に腐っちゃダメ。必ず出番は来るから」

 深くうなずき、黙々とフォーム修正に入った。腰の痛みを抱えた数年前から、上半身に頼る癖に悩まされてきた。掛布2軍監督のチェックも受け、「下半身主導で振る」形を反復してきた。

 この日は7回に代打登場し、そのまま三塁守備に就いた。金本監督は「それ(1発)を期待して出している選手だけど、まさかあの場面でね…」とビックリの値千金弾。連敗を3で止め、これで勝率5割で迎えた試合は7戦6勝1分け(開幕戦を除く)。指揮官も「土俵際だったけどね」とうなった勝負強さを、またも発揮した。【佐井陽介】