ついに出た! 日本ハム大谷翔平投手(21)が、「日本生命セ・パ交流戦」巨人戦で、日本球界最速の163キロをマークした。「5番投手」の“リアル二刀流”で出場し、6安打10奪三振2失点(自責1)の完投勝利。4回のクルーズの打席で、163キロを投げ込んだ(結果はファウル)。バットでも6回に右前打を放って、打席に立った試合の連続安打を「15」に伸ばし、犠飛で打点も挙げた。投打に輝きを放ち、巨人戦で初勝利を挙げた。

 歴史的な1球は、大谷自身の想像を超えた。内心は冷や汗ものだった。「失投ですね。真ん中なので」。4回1死満塁。クルーズへの4球目、こん身の直球を制球ミスした。だがバットはかするのがやっと。球速が表示され、スタンドがどよめく。日本球界最速の163キロ。続く122キロのカーブで緩急を使い、三ゴロ併殺でピンチを脱した。握った右拳を突き上げ、ほえた。

 だれにもまねできない、最大の武器だ。こだわりの薄かった球速に対しても、考えは変わった。「ああいう場面では効果的だと思う。“球速の保険”をかけながらファウルが取れれば、いいんじゃないかと思う」。コースが甘くなっても、フェアゾーンに飛ばなければ優位に勝負を進められる。得点圏に走者を背負ったときは、スピードを狙って出すようになった。

 完投にもこだわった。「ひとりでいくつもりだった」。「5番投手」での“リアル二刀流”出場。試合前には6番の陽岱鋼に「投手より後ろを打つんですね」と冗談を飛ばした。中軸として打線に組み込まれる責任。途中でマウンドを降りると、ゲームプランが大きく狂うことを理解していた。昨年7月2日オリックス戦。血マメができて途中降板した後、緊急で救援した宮西が打たれ勝利が消えた。「すまんかった」と謝られた。悪いのは自分。先輩の方が悔しいはずなのに…。チームのため、仲間のため、託されたマウンドは守り抜く。あのとき誓った。

 大田に先頭打者弾を浴びたものの、8回2死まで無四球。速球と変化球のコンビネーションで、アウトを積み上げた。9回、この日の120球目に161キロを計測。最後まで球速も衰えず、6安打10奪三振2失点で任務を遂行した。

 バットでも6回に右前打を放ち、打席に立った試合の連続安打を「15」に伸ばした。3回無死満塁の場面では犠飛で打点も挙げた。試合前、ダッグアウト裏でティー打撃を行った効果もあった。「まだ6月に入ったばかり。球速は別として、投球の状態は上がってくると思います」。日本人最速投手として、本塁打率トップクラスの打者として、歴史は大谷によって塗り替えられていく。【本間翼】

 ▼大谷が4回にプロ野球最速163キロを記録。08年6月1日クルーン(巨人)と大谷自身が記録した162キロを更新した。大谷は、公式戦では14年10月5日楽天戦で162キロを4度計測し、今年の5月15日西武戦でも2度記録。14年7月19日オールスター第2戦(2度)、今年の3月2日、巨人とのオープン戦を含めると、これまで162キロを9度記録していた。