ヤクルト山田哲人内野手(23)が、リーグ最速で20号を放った。3年連続の大台突破。実にシーズン44本ペースだ。本塁打、盗塁だけでなく打点もバレンティンを突き放す「49」でリーグ単独トップに君臨。打率は3割2分9厘でリーグ2位。2年連続のトリプルスリー達成だけでなく、打撃3冠王も射程圏内。試合には敗れたが、今年も絶好調のバットでチーム、さらには球界の顔へ上り詰める。

 正午すぎ。試合前の練習を終え、山田は多くの報道陣でごった返す三塁側ベンチに戻ってきた。気温は28度。滴る汗をタオルで拭い、「ふー」と息をついた。普段は足早に通り過ぎるが、珍しく椅子に腰を掛けた。「昨日は(仙台から)移動でしょ。で、本塁打0。移動疲れがまだある。だから打てないと思う。明日なら何か打てると思うんですけどね」。口を突くのは、いつも通りの弱気発言。予告「0発」だった。

 フェイクだった。約3時間後。目の前にある獲物に眼光を鋭く光らせた。4回1死。フルカウントからの9球目だった。真ん中スライダー。千葉名物の風をものともしない、低い弾丸ライナーで返した。左翼スタンド最前列へ、3年連続の20号。「詰まっていたけど、めっちゃ伸びた」と先制ソロをぶっ刺した。

 今年に入って芽生えた「責任感」が結果をもたらしている。昨季は14年ぶりのリーグVを経験。「自分が毎日試合に出て活躍しないかん」と思うようになった。公言する「2年連続のトリプルスリー達成」と同等に2年連続の「全試合出場」を強く意識する。

 山田 毎日、しんどいけど出ざるを得ないでしょ。誰かに絶対に出ろって言われたわけでもないけど。何が何でも、自分の意志は貫かないとね。

 刺激を受ける先輩がいる。10~14年まで5年連続で全試合出場を果たした巨人坂本を引き合いに出した。「勇人さんもそうやし。試合に出続けることは大変。その中で結果を出すことはもっと大事」。チームの「顔」になる必要性を感じながらバットを振っている。

 勢いはチーム内にとどまらない。65試合を終え、44本ペースの本塁打だけでなく、打点でもリーグ単独トップ。16盗塁も1位の成績だ。打率も巨人坂本に次ぐ2位に位置づける。トリプルスリーどころか、3冠王も視野に据える。「数字はあまり気にならない」と話したが、球界の中心に向かって山田が走り続けている。【栗田尚樹】

 ▼山田が昨年に続いてセ・リーグ20号一番乗り。昨年の20号はチーム86試合目の7月21日DeNA戦だったが、今年は65試合目で昨年より21試合も早く到達した。2年連続でセ20号一番乗りは11、12年バレンティン(ヤクルト)以来で、日本人選手では97、98年松井(巨人)以来18年ぶりだ。これで今年の交流戦は日本ハム戦2本、オリックス戦1本、楽天戦1本、ロッテ戦1本と4カード連続で本塁打。残りのソフトバンク戦、西武戦でも1発を放ち、1シーズンで対戦する11球団すべてから本塁打を打てるか。