阪神ベンチは凍りついていた。1点リードした9回に追いつかれ、なおも2死満塁。投入されたドリスが代打松山を打ち取ったはずだった。左中間の飛球を捕りにいった中堅中谷と左翼俊介が激突。倒れ込んだ2人の間から白球がこぼれ落ちた。勝利目前から逆転サヨナラ負けだ。

 お互いに声も掛け合っていたという。それでも、大勝負の土壇場で痛恨のミスが起こった。俊介は右足、右肩を地面に強打して転倒。動けずトレーナーが駆け寄った。衝撃の結末…。仕切り直すはずのリーグ戦再開後、まさかの3連戦3連敗。金本監督は険しい表情で振り返った。

 「言いようがない。まあでも、お見合いしたわけでもなく、ぶつかってでも捕るという。ただ、1つ、高いフライだから、お互いを目線で、パッと見るとか。中谷の若さかな。俊介も見ないといけないし」

 それまで2度のダイビングキャッチを披露していた中谷は、サヨナラ失策に「ぶつかっても捕らないと…」と唇をかみ、問いかけにもうなずくだけ。借金は今季最多の7に膨れ上がり、首位広島と10・5ゲーム差に拡大。最下位ヤクルトが0・5ゲーム差に迫る。早ければ30日にも自力優勝の可能性が消える。今季最大の窮地を迎えた。【酒井俊作】