巨人が筒香に踏みつぶされた。ドロー目前の延長12回1死。節目の600試合登板の山口が最後の餌食になった。5球中4球の内角攻めで意識を植えつけ、最後は外角直球で仕留めるはずだった。だがプランと裏腹に142キロ直球が魅入られたように甘く入り、夜空に“星”となって消えた。美しくも、巨人には、はかなすぎる結末だった。

 数々の修羅場をくぐってきた左腕。今季は不振も左には試合前まで被打率1割5分4厘とキラーぶりは健在だった。「1人でぶち壊してしまって申し訳ないです」。女房役の小林誠は「最後は自分の配球ミス。打たれていたから四球でも良かった」と今季初のサヨナラ負けを悔いた。

 1本の大飛球が脳裏から離れなかった。初回2死二塁。菅野のスライダーが右翼ポール際へぶっ放された。わずかにファウルで命拾いも「曲がり球の反応がよかった」とエースに刻まれた。4回はワンシームも含め7球連続で直球系を続けて二塁打。続く6回も2球連続直球勝負で左翼席に3戦連発を運ばれた。「(直球選択は)チームの勝ちを優先した。スライダーを打たれていたら悔いが残る。でも抑えないといけない役割。これから投げる投手に申し訳ない」と背負った。

 高橋監督は「悪くはなかったが、エースだから何とか4番を抑えてほしかった」と、あえて注文を出した。無双状態の筒香との対戦は続く。捕手目線を備える阿部は「あいつも人間だから。何とか考えさせないと」と言葉を残した。4連勝で止まり、首位広島とは再び10ゲーム差。筒香を止めなければ明日はない。【広重竜太郎】

 ▼通算600試合登板=山口(巨人) 22日のDeNA16回戦(横浜)にリリーフ登板して達成。プロ野球38人目で、巨人では初めて。初登板は07年4月29日ヤクルト5回戦(神宮)。