その剛速球があるのに、なぜ…。阪神藤浪晋太郎投手(22)が自己最速、プロ野球史上6人目となる球速160キロを記録した。1回1死満塁で対した広島鈴木誠也外野手(22)への3球目に刻んだ大台。同学年の日本ハム大谷翔平投手(22)が日本最速164キロを記録した翌日に投じてみせたが、7回途中3失点でまた勝てず。夢の160キロを、復活への足がかりにしたい。

 藤浪はフィニッシュを崩してまでも、長いリーチを最大限に伸ばした。0-0の1回1死満塁、2ストライクから5番鈴木への3球目だ。外角低めに外れた直球は160キロ。電光掲示板に数字が光ると、どよめきが甲子園全体に広がった。

 藤浪 引っかけ球ですし、スピードガンが出たから抑えられるわけではない。球速より球質なので。

 前日13日に164キロを計測した日本ハム大谷、ヤクルト由規に続き、日本人投手3人目となる大台到達。ただ、今季自己ワーストの6四球を与え、7回途中3失点の降板では納得できない。初回は2安打3四球で2失点。24試合先発で初回計25失点と課題は残る。1回、6回と先頭打者への四球が失点に結びつき、「そこに尽きる」と猛省した。

 前回6日巨人戦から中7日の間にフォームを微修正したという。「まとまりすぎる感じがあったので、打者との距離を詰めよう、と。できるだけリリースポイントを前にしました」。160キロの直前にも、鈴木への初球外角ストライクに自己最速を1キロ更新する159キロを投げ込んでいた。一方で制球を乱した。

 藤浪 そこまでいかないにしても、イメージは全盛期の巨人桑田さん。投げた後、捕手の方向にポンッと飛んでいく感じ。

 理想像がある。キーワードは「地面反発力」。左足に全体重が乗った場合、地面にかけた圧力が強い反発力となり左足に戻る。その反発力に耐えられなくなった左足がポンッと浮き、体が前にジャンプするイメージ。この日は左足に体重が乗るもフィニッシュで崩れる場面が何度もあった。次は安定感がほしい。

 藤浪 160キロうんぬんは別にして、打者を押し込めた感覚はありました。

 次回は中7日で22日の敵地広島戦に向かう見込み。16年最終マウンド。今季0勝4敗と苦しんだカープ打線を、最後はねじ伏せて終わりたい。【佐井陽介】