勝って送り出す! 広島新井貴浩内野手(39)、黒田博樹投手(41)のベテラン2人が、20日に現役引退を発表した広瀬純外野手(37)、倉義和捕手(41)の後輩を惜しみ、CS突破、日本一を誓った。黒田は2人の引退試合となる25日の本拠地最終戦で先発予定。はずみをつける一戦にする。

 蒸し暑さもなくなり、すっかり秋らしくなったマツダスタジアム。それは一方で寂しい季節の到来を告げるものでもある。前日20日に低迷期を支えた倉と広瀬が現役引退を表明。一夜明けての全体練習を終え、新井が口を開いた。FA移籍前から思い出は多い。

 新井 純はね。走攻守の3拍子そろった選手だった。ただケガが多かった…。ケガさえなければ、というのはあるけどね。長い間お疲れ様でしたと伝えたい。

 倉は1学年先輩。入団当初から、かわいがってもらった。今季はシーズン前の自主トレも共に行った。

 新井 昔からよくご飯に連れて行ってもらったり、お世話になった。寂しいね。長いこと一緒にやっているしね。あとは…。

 そして冗談も付け加えた。今では語りぐさとなっている、黒田が倉に怒った05年の“ミット事件”だ。ブルペンでのあいまいな球数のコールと、鈍い音しか鳴らない新品のミットに黒田が「今の段階でミットを作っている(慣らす)ことが投手に失礼。ブルペンも互いにきっちりと準備をして臨む真剣な場」と怒った。

 新井 あのとき、倉さんが僕の部屋に来て“言い訳”をしていた。それを黒田さんに伝えたら、もっと怒って。(笑い)

 冗談が飛び交うのも、関係が深いからこそ。黒田自身も復帰後、激励を続けてきた。冗談を交えながら、労をねぎらった。

 黒田 何回も部屋に謝りに来ました。別に謝ることではないんだけど。今年もコーチという肩書きに甘えずに、やれることをやれとは言って来たんだけど。

 思いはそれぞれにある。黒田は引退試合が行われる25日ヤクルト戦(マツダスタジアム)で先発予定。かつてのバッテリーが復活する可能性もある。自身の7年連続2桁勝利もかかる。チームにとってもはずみをつける一戦になる。

 黒田 良い形で送り出したい。

 新井 純や倉さんだけでなく、たくさんの先人、OBの方の思い、歴史がある。全部背負ってCSも戦っていきたい。

 最後には笑顔は消えた。背負うものが多いと、男は燃える。【池本泰尚】