プレーバック日刊スポーツ! 過去の10月14日付紙面を振り返ります。2008年の1面(東京版)は西武大久保コーチとボカチカ外野手が激しく口論し、乱闘寸前でした。

 ◇ ◇ ◇

 クライマックスシリーズ第2ステージ(17日〜、大宮、西武ドーム)へ向け宮崎で合宿中の西武に「内紛」が勃発(ぼっぱつ)した。13日、南郷スタジアムで行われたフェニックスリーグ・四国九州アイランドリーグ選抜との試合中に、大久保博元打撃コーチとヒラム・ボカチカ外野手(32)が激しく口論し、乱闘寸前となった。渡辺監督らが止めに入ってケンカは収まったが、日本ハムとの決戦を前に、思わぬ騒動が起こった。

 試合を裁く球審も、ギョッとして一塁側に目をやった。4回裏の攻撃中。西武ベンチ内で起こった言い争いに周囲は騒然となった。興奮したボカチカが発した「Bi○ch」といった放送禁止用語が大久保打撃コーチの怒りの炎に、油を注いだ。「何だと、コラ〜。(ベンチ)裏に来い!」と怒鳴り声をあげると、ボカチカは「NO!」と鬼の形相で応酬。興奮して相手につかみかかろうとする両者を、渡辺監督らが引き離し騒ぎは収まった。

 事の発端はこうだ。1点リードで迎えた4回裏1死三塁の場面で、ボカチカが打席に入った。2ストライクに追い込まれるまでのスイングを見た大久保コーチが、黒川通訳に「こういう場面では最低でも外野フライを打つ意識を持つように、(後で)ボカチカに伝えてくれ」と英語を交えて言った。このベンチ内での会話が、打席のボカチカの耳に入った。一邪飛に倒れて戻ってきたボカチカが「打っている最中に言わないでほしい。打席で集中できない」と文句をつけた。徐々に両者は興奮し、乱闘寸前の騒動に発展した。

 ボカチカはその後もプレーを続けたが、明らかにふてくされ、続く6回の打席であっさり3球三振に倒れた。その後、交代を告げられると、報道陣に「ナッシング」とだけ言い残して、試合中にもかかわらず1人でチーム宿舎へと帰った。大久保コーチは試合後、「あの場面では外野フライを打つ意識が必要。春から言い続けてきたことができない」と注意した理由を説明。我を失うほど怒ったことについては「物には言い方がある。コーチに向かって、放送禁止用語を使ったらいけない」と話した。

 G・G・佐藤やブラゼルら大砲を故障で欠くチームは、今季20本塁打のボカチカを日本ハムとのCSでの貴重な戦力として期待している。宮崎合宿最後の実戦となったこの日の試合でもCSを見据え、先発で起用した。今後への影響が心配されるが、渡辺監督は「たいしたことじゃない。ちょっとした言葉の行き違いがあった」と、チーム宿舎でボカチカと話し合いの場を持ちしっかりとアフターケアを行った。

 ケンカでチーム全体が引き締まったのかもしれない。7回には中島がきっちりと右犠飛を放ち、大久保コーチは「あの騒動のおかげかな」と笑った。バスターエンドランなど小技も絡めて試合は6−2で快勝。渡辺監督は「いい試合だった。17日から始まるCSに向かって、チームが1つにまとまっていけばいい」と、今回の合宿で初めてと言ってもいい会心の勝利を満足げに振り返った。雨降って地固まる、となるか。

※記録や表記は当時のもの