広島が初のCS制覇へ快勝発進だ。セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦。4番新井貴浩内野手(39)が、3回にリードを広げる適時打を放つなど効果的に得点を重ねると、投げてはクリス・ジョンソン投手(31)が完封勝利。投打ががっちりかみ合った鯉が、日本シリーズ進出まで、あと2勝だ。

 泥臭い打球で、新たな歴史を紡いだ。新井が引きつけた打球は、しぶとく右前に抜けた。1点先制し直後の3回1死二塁。追い込まれて外角スライダーに腕を伸ばした。「得点圏だったし、何とかしたいと思ってくらいついた」。丸との連打で主導権を掌握する先制劇に、一塁ベース上でパンパンと手をたたいた。

 ファンも一体となり、終始ペースを握った。「思ったより落ち着いていたかな。地に足がついていた」。過去CSを4度経験も、ファーストステージ突破は1度だけ。通算成績は打率2割、本塁打なし、1打点と辛酸をなめた。経験から学んだのが「攻め続ける気持ち」だった。

 「受け身になると、あっという間に終わる。アドバンテージとか関係なく、ガッと。一丸で入っていきたい。短期決戦では小さなミスが命取りになる。プレーボールからゲームセットまで集中していきたい」

 実戦から離れていたが、体温は上昇し鼓動は早まっていた。それでいて頭は冷静な最高の状態。新井自身への効果も抜群だった。

 互いにハイタッチを繰り広げ、声を出して部屋を出た。試合開始直前、ロッカー室近くの会見室。横3メートル超の140インチ巨大スクリーンが用意され、ナインが集められた。サプライズで映し出されたのは約7分のビデオ。優勝の瞬間から、厳しいキャンプの練習、好プレー、死球シーン、涙するファンまで。戦いのスイッチは自然と入った。そして締めくくりだった。

 「新たな 歴史を 作るのは 俺たちだ!!!」

 発案者は黒田だった。ヤンキース時代にチームが作成し、見ていた経験を還元。ジャクソン、ヘーゲンズのお気に入りの曲も盛り込んだことで一体感も増した。サプライズ要素を大切に、小窪と新井以外は知らなかった。「みんなで一緒にという気持ちで」と黒田。冷静に、熱く。ワンプレーでベンチは盛り上がり、ガッツポーズは何度も作られた。格好良すぎる豪快な先勝。新たな歴史が、幕を開けた。【池本泰尚】

 ▼広島が第1戦に完封勝ちし、アドバンテージの1勝を含め2勝。広島のファイナルSは巨人と対戦した13年に次いで2度目だが、前回は0勝4敗。初めてファイナルSで白星を挙げた。日本シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで「2勝0敗」は過去18度あり、すべて日本シリーズに進出。第1戦に完封勝ちのチームも81年日本ハム、82年西武、10年中日、13年楽天と、すべて日本シリーズに出場、今年は完封発進で2勝とした広島、日本ハムが断然有利となった。