プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月2日付紙面を振り返ります。2002年の1面(東京版)は巨人松井秀喜選手の米大リーグ移籍表明でした。

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 さらば、読売ジャイアンツ…。巨人松井秀喜外野手(28)が1日、東京・内幸町の帝国ホテルで記者会見を開き、FA宣言して米大リーグ球団へ移籍することを表明した。前日10月31日夜、悩みに悩んだ末、決断した。長嶋前監督らの慰留を振り切っての挑戦。「やるからには命をかけてやりたい」と巨人と決別し、メジャーに骨を埋める強い決意を語った。希望球団は明らかにしなかったが、名門ニューヨーク・ヤンキースが有力だ。

 最後は野球人としての夢が勝った。松井がメジャーへの思いを貫いた。帝国ホテルで午前10時から行われた記者会見。テレビカメラ20台、カメラマン50人、記者300人が押し寄せ、全国へ生中継された。スーツ姿で登場した松井はどこか伏し目がちだったが、メジャーへ骨をうずめる覚悟を決めた男の思いは、米国へと向いていた。

 松井 松井秀喜はFA権を行使し、来年よりメジャーリーグでプレーすることを望み、その道を選びました。向こうでプレーしたい気持ちが、最後まで消えなかった。やっぱり夢。今までやってきたスタイルを貫き通したい。一番の魅力はホームラン。ホームランを打てる打者になりたい。骨をうずめる覚悟? 中途半端な気持ちではいけないと思う。命がけでやります。

 夢が現実になる。だが喜びは見せなかった。10月31日、テレビ出演をすませ午後5時30分に都内の自宅マンションに約1週間ぶりに戻った。初めて1人になって考えた。悩んだ末の結論は巨人との決別。1時間30分後の午後7時に自宅を出て都内のホテルで長嶋前監督に会った。「アメリカでプレーしたいという気持ちを消し去ることができません」と告白。原監督、土井球団代表のもとへも向かい、それぞれ個別にメジャー挑戦の意向を伝えた。

 長嶋前監督には感謝の言葉しか浮かばなかった。

 松井 長嶋監督が退いてからも、個人的に何度も食事をさせていただいた。監督の立場から、プロ球界のすべて、ファン、巨人のこと、思いのすべてをぶつけられた。そうしなくてはいけない、という思いで頑張ったが、最後はわがままを聞いてもらった。何を言っても裏切り者と言われるかもしれないが、いつか松井は行ってよかったと思われるように頑張るしかない。

 週明けの5日には、権利行使の意思を文書で巨人へ通知する。13日には、いよいよ交渉解禁。メジャーの争奪戦が展開されるが、本格参戦できるのは限られた球団との見方が強い。メッツ大慈弥スカウトは「獲得へ乗り出す球団は、資金力がないと手が出せないと思います。やはり日本一の打者だから、それなりの資金が必要」と説明。ヤンキースが最有力だが、その他ジャイアンツ、メッツ、マリナーズなども興味を示す。

 9日開幕の日米野球の視察を兼ねてヤ軍、ジ軍のトップも来日する。ただ松井は「ある程度の希望球団はありますが、白紙というところです」と強調。交渉のカギを握る代理人に関しては「使わずにやろうと思ってます。自分がやれる範囲でやりたいからです」とあくまで自然体だった。

<松井一問一答>

 ―最終的に決断したのは

 松井 昨日(31日)の夜、自宅で独りで決めた。長引かせてはいけないという思いがあって昨日がリミットだった。

 ―周囲の慰留に悩んだか

 松井 昨夜、長嶋前監督、土井球団代表、原監督にお会いしてその旨を伝えた。心苦しかったが、僕自身、向こうに行ってプレーしたいという気持ちが最後まで消えなかった。

 ―どんなプレーをする

 松井 松井秀喜のスタイルを貫きたい。一番の魅力はホームランだと思うので、向こうでもホームランが打てればと思っている。ジャイアンツで10年やって養ってきたジャイアンツ魂を向こうでも発揮したい。

 ―希望球団は

 松井 何の準備もしていないので白紙の状態。ある程度の希望はあるが、それを言う立場じゃない。

 ―代理人が必要だが

 松井 できる限り自分1人で。早い話、使わないでやってみようかと思います。自分ができる範囲で自分のことはやってみたいから。

 ―英語の勉強は

 松井 まったくしてません。

 ―ファンに対しては

 松井 申し訳ない気持ちでいっぱい。いつかは行ってよかったと思ってもらえるよう頑張りたい。

 ―将来の日本復帰は

 松井 希望は持っているが、それが許されるかどうか分からない。もちろん、中途半端な気持ちではいけない。決断した以上は命をかけてやりたい。

 ―長嶋前監督とはどんな話を

 松井 ファンも含めて(日本の)プロ野球界すべてのために、プレーしてほしいという気持ちをぶつけていただいた。そうしなくてはと思うよう頑張ったが、最後は僕のわがままを聞いていただいた。

 ―原監督とは

 松井 最後はゴジ(松井)が決断したのであればおれは応援すると言われた。

※記録と表記は当時のもの