ミスターばりに試合を決めまくってくれ! 阪神ドラフト5位のJX-ENEOS・糸原健斗内野手(23)が26日、神奈川・川崎市内の同野球部クラブハウスで指名あいさつを受けた。かつて巨人が練習場として使用し、あの長嶋茂雄の血と汗が染み渡った旧多摩川グラウンドもランニングコースだったというルーキー。セールスポイントに勝負強さをあげ、堂々のクラッチヒッター宣言だ。

 糸原はニヤリと笑い、自信満々に言い切った。

 「チャンス、大好きなんですよ!」

 社会人野球デビュー戦でサヨナラ打を記録したという「神ってる」男。学生時代を振り返り、「サヨナラヒットは結構打ちました。同点打とかにも価値があると思っています」と笑う。練習中もフリー打撃から「1死一、三塁、1ボール2ストライク」などと打撃投手に声をかけ、細部まで勝負どころを想定してきた。

 「社会人2年間の一発勝負で培った勝負強さが、自分の持ち味です」

 担当の北村照文スカウトも「相手が打たれそうだなと嫌がる勝負強さ、集中力を持っている。こういう選手が集まればタイガースは強くなる」と絶賛するポテンシャルの持ち主だ。

 チャンスで活躍する打者、クラッチヒッターには縁がある。JX-ENEOS硬式野球部の等々力グラウンドは多摩川沿いにある。川向かいには多摩川緑地広場運動施設内硬式野球場、かつて巨人が練習場で使用した多摩川グラウンドが見渡せる。同野球部の選手からすれば、地獄のランニングコースの一部だ。

 都市対抗出場を逃した今夏には約2週間、毎日早朝から走り込んだ。朝6時に野球部施設を飛び出して、二子橋、丸子橋を利用して川沿い約12キロを走り続けるコース。「景色が変わらなくて…。1時間以内に走りきらないといけないんです」。苦笑いで記憶をよみがえらせるが、あの長嶋茂雄も汗を流した場所を踏みしめ続けたから今がある。

 印象深いクラッチヒッターを問われると、即答した。

 「金本監督はチャンスの場面で必ず打っていたイメージがあります」

 ミスター、そして開星高校時代から通うジム「アスリート」の大先輩が大目標。狙った獲物は逃さない。【佐井陽介】

 ◆糸原健斗(いとはら・けんと)1992年(平4)11月11日、島根・雲南市生まれ。大東西小2年から野球を始めた。大東中をへて、開星(島根)では甲子園に出場。明大では主軸を打ち、3年時はベストナインに輝いた。15年からJX-ENEOSでプレーし、主に三塁を守る。昨夏は都市対抗に出場し、今夏も東芝の補強選手としてプレー。目標の選手は阪神鳥谷。175センチ、78キロ。右投げ左打ち。