プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月25日付紙面を振り返ります。2009年の1面(東京版)は、野球引退後を熱く語った早大・斎藤佑樹投手でした。

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 早大・斎藤佑樹投手(3年=早実)の夢は政治家だった。甲子園で行われたオール早慶戦から一夜明けた24日、早大の系属校として今年4月に第1期生を迎えた大阪・茨木市の早稲田摂陵中学、高校で、応武篤良監督(51)とともに講演会を行った。文武両道を目指す約600人の中高生を前に、野球引退後は政治家を目指す志を熱く語った。大学3年目のシーズンは今日25日の米国バンダービルト大とのオープン戦で終了。本業の野球では、来年のドラフトイヤーに向けて、年末年始も無休を宣言した。

 中高生たちの熱いまなざしに、心が揺さぶられたのか。斎藤の口からビッグなプランが飛び出した。学生から「文武両道を実践するためにはどうしたらいいですか」という質問を受けた直後だった。受験勉強中は2時間勉強して、素振り、ランニング、また勉強と繰り返したことを明かし「スポーツだけでも、勉強だけでも人間として立派になれないと思う」と説いた。

 そして、斎藤自身が野球を終えた後の人生の方が長いと考え、現在学んでいることの説明を始めた。

 斎藤 今は金融、経済のことを勉強しています。野球が終わった後のために、それからのために勉強している。将来は政治家になりたいと思っています。

 思わぬ発言に会場からは驚きと、歓声が漏れた。教育学部に通う斎藤は、上級生になった今年からゼミに入り、金融工学を専攻している。「日本の今の経済状況などを、みんなで話し合うみたいな感じ」と、100年に1度といわれる不況に陥った経済状況などを分析。生まれ育った地元群馬は中曽根康弘、故小渕恵三氏、福田康夫ら歴代総理大臣の出身地として知られる。講演後は「リップサービスです」と笑っていたが、今年の成人式前には群馬・太田市の清水聖義市長と新春対談を行った。「とてもいい人でした」と、“地盤固め”も着々だ。

 すべては後輩たちに文武両道の大切さを伝えるための、サービス精神から飛び出した話だった。ただ斎藤自身、地元への愛着は人一倍強い。成人式では将来の太田市長選挙立候補の可能性を問われて苦笑いを浮かべていたが、胸に抱く大志はもっと大きかった。将来国政に出馬するなら、愛する地元からが最有力だ。

 これまでアナウンサーや先生などの夢を語ったことはあるが、すでに教職課程の履修を断念するなど、来秋ドラフトでプロ入りするのは確実だ。ならばと、引退後のプランを着々と温めていた。かつて野球界からは江本孟紀氏らが政界に転身した例がある。絶大な人気を誇る斎藤なら出馬すれば当選は確実か。「佑ちゃん」ではなく「斎藤先生」として、レッドカーペットを歩く日が来るかもしれない。

※記録と表記は当時のもの