広島が4日、マツダスタジアムで秋季練習を開始した。緒方孝市監督(47)は練習前に数名の選手を呼び寄せ声をかけるなど、初日から精力的に動いた。8日から始まる日南秋季キャンプでは、選手個々のレベルアップに重点を置き、打順や守備位置の入れ替えの可能性も示唆。ゼロからの競争が始まる。今日5日は広島市民とともに優勝の喜びを共有するが、気持ちは早くも来季に向いている。

 始動初日から、指揮官が動いた。全体練習前の円陣が解けると、緒方監督は大瀬良、鈴木、会沢、小窪、田中…次々に声をかけると、個別に話をした。今季得た自信と課題、来季への期待。日本シリーズを戦ったことで、来季へ向けた始動は他球団よりも遅い。だからこそ、選手個々に対し、やるべきことを明確にする必要があった。

 「投手では大地。先発として頑張ってもらわないといけない。今季、1軍の戦力となったのはオールスター以降。この失敗を生かしていかないといけない」

 緒方監督は、今季途中から中継ぎ転向させた大瀬良の来季先発起用を明言した。大黒柱の黒田が抜ける先発の柱として期待するだけに、かける言葉にも熱がこもった。大瀬良は「今年、戦力となれたとは思っていない。ケガをしないようしっかりやっていかないといけない」と言い切った。侍ジャパン選出にも、指揮官のげきに気を引き締めた。

 8日から始まる日南秋季キャンプは、日本シリーズ出場によって例年よりも期間が短い。実戦形式の練習も少なく、より選手個々の鍛錬となるキャンプとなりそうだ。「個々のレベルアップがチーム力を変える。」と緒方監督。10月のドラフトで4位の高卒捕手のみの指名に終わった野手は特に現有戦力の底上げが大きな鍵を握る。

 一部の選手には複数のポジションを守れるユーティリティー性を求めていく。「固定概念にとらわれない、可能性を広げるキャンプだと思っている」。主力も例外ではない。打順入れ替えによる「タナキクマル」の上位打線の解体、守備位置変更による中堅丸の左翼テストなども考えられる。

 今日5日、広島で41年ぶりの優勝パレードが行われる。街は再び歓喜と熱気で沸き上がるだろう。だが、緒方広島の3年目の戦いも静かに幕を開けようとしている。【前原淳】